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特集第9号「50年後も生き残る!フリーランスのためのスキルアップ&キャリアアップ戦略ガイド」

2021年11月8日

特集公開日:2021年11月9日 by Wor-Q MAGAZINE 編集部

Wor-Q MAGAZINE特集第9号のテーマは、「50年後も生き残る!フリーランスのためのスキルアップ&キャリアアップ戦略ガイド」です。

フリーランスとして働いている限り、「これから先もずっと、稼ぎ続けていくことができるのだろうか?」という不安が消えることはないでしょう。将来不安がある状態では、今を生きることに精一杯で、未来に向けた投資を行うこと(学習のために、お金や時間といった貴重な資源を使うこと)にも慎重になってしまうかもしれません。でも、スキルアップのための投資を行わなければ、「できること」がいつまで経っても変わっていきませんから、残念ながら、いつしか、仕事を得続けることが難しい状況に陥っていってしまうでしょう。

時代の変化とともに、世の中に求められることは変わっていきます。今、あなたが優れたスキルを持っていて、どれだけ多くのお客様を満足させることができていたとしても、何もしなければ、将来に渡ってその状態を維持することは難しいのです。お客様も、変化(進化)していくのです。お客様から必要とされ続けるためには、お客様が求めるサービスを提供し続けていくためのスキルを習得し続けていかなければなりません。それが「スキルアップ」です。

それだけではありません。長い仕事人生を通じて、あなたを取り巻く環境は変化していきます。あなた自身の状況も変化していくはずです。さまざまな事情で、今と同じ仕事をずっと続けていくことができるとも限りません。あなたがいま手掛けている仕事そのものが、やがて世の中から消えていってしまうかもしれません。生き延びていくためには、環境変化や自身の変化に適応する形で、仕事の内容そのものを変化(進化)させていくことが重要です。それが「キャリアアップ」です。

「キャリアアップ」とは、収入レベルや社会的地位の上昇ということを意味しません。「偉くなる/有名になる」ということも意味しません。それらは、「キャリアアップの結果として、ついてくる可能性があるもの」という程度のものでしかありません。

仕事においては、「経験を積むことでできること(経験を積まないとできないこと)」があります。「仕事の経験を通じて、仕事の幅を広げ、あなたが提供できる価値の幅を広げていくこと」こそが本当の意味での「キャリアアップ」なのです。

ですが、「キャリアアップ」を実現することは、簡単なことではありません。一生懸命仕事をすることは「キャリアアップ」を実現するための必要条件ではありますが、ただ一生懸命仕事をしたからといって必ず「キャリアアップ」を実現できるとは限りません。21世紀、とりわけ2020年代に入り、社会環境、ビジネス環境の非連続的な変化が断続的に起き続けています。「昨日と同じ世界が明日も続く」とは誰も言いきれない時代に突入したのです。「昨日までの経験がそのまま役に立つ」時代ではなくなってきています。ただ単に「経験豊富である」ということが、そのまま価値につながるともいえない時代になってきているのです。単純に「スキル」という側面だけで見れば、新しくその世界に入ってきたばかりの人のほうが、より最新の、価値のある(世の中から必要とされる)能力を保有しているということすら起こりうるのです。そうした、「激変する世界」の中で、「数十年もの間、独立したフリーランスとして価値を出し続ける」ためには、確固たるキャリアアップ戦略を持って仕事人生を設計していくよりほかないのです。それはつまり、変化(進化)し続けることが重要だ、ということです。変化(進化)には勇気が必要です。ですが、だからこそ、変化(進化)が価値となるのです。

本特集は、二部構成で、「50年後も生き残るためのスキルアップ・キャリアアップ戦略」をお届けしていきます。第一部では、「フリーランスのためのスキルアップ戦略」編として、ただ単に「技能を磨く」ということにとどまらない、お客様に求められる価値を提供する能力を高めていくための戦略を整理します。第二部では、「フリーランスのためのキャリアップ戦略」編として、「どうすれば、仕事の経験を活かして、次なる新しい仕事のステージに展開していくための変化(進化)を生み出していくことができるのか」についての戦略を整理します。本特集は、Wor-Q Magazine特集第4号「フリーランス1年目をどう生きるか」の姉妹編です。両方をあわせてお読みいただき、フリーランスとしての仕事人生の将来設計にお役立てください。読んで、「いいね!」と思っていただけたようでしたら、どうぞ、必要とされている方に、ページのURLをシェアしてくださいね。

特集コンテンツをフル活用して頂くために

「Wor-Q MAGAZINE」の特集記事の中には、「働く」に関する難しい専門用語を学びながら読み進めていくことができるよう、「Wor-Q用語集」へのハイパーリンクを丁寧に設定しています。また、具体的な事例を参照しながら、より具体的・実際的に各テーマに対する理解を深めていくことができるよう、「Wor-Q相談事例集」へのハイパーリンクもところどころに丁寧に設定しています。「Wor-Q MAGAZINE」は、どなたでも全文無料でお読みいただくことができますが、Wor-Qで「連合ネットワーク会員」に登録いただくことで、すべての「Wor-Q用語集」「Wor-Q相談事例集」を参照しながら、より便利に&より深く、「Wor-Q MAGAZINE」をお読みいただくことができるようになります。「連合ネットワーク会員」への登録はカンタン、そして無料です!まだ登録がお済みでない方は、まず、ぜひ、ご登録をご検討ください!

目次

「50年後も生き残る!フリーランスのためのスキルアップ&キャリアアップ戦略ガイド」

第1部 「フリーランスのためのスキルアップ戦略」編

▼1-1:「スキル」とは何か
  ●「知識」とは
  ●「技能」とは
  ●フリーランスが「知識」を学習(習得)するための効果的な方法
  ●フリーランスが「技能」を学習(習得)するための効果的な方法
  ●「スキル」と「ケイパビリティ」 ~「スキル」だけでは仕事にならない~
  ●真のプロフェッショナルとは
  ●フリーランスにとっての「資格」の意義

▼1-2:「スキルアップ」の先へ
  ●スキルの組み合わせ
  ●顧客領域の専門特化
  ●パートナーコンサルタント化
  ●ブランディング~名前で仕事を取れるようになる~
  ●クレジット ~名前そのものが価値になる~
  ●戦略的に「仕事を選ぶ」
  ●「受託仕事」と「じぶんの仕事」を組み合わせる

第2部 「フリーランスのためのキャリアアップ戦略」編

▼2-1:はじめに ~フリーランスにとっての「キャリアアップ」とは何か~
▼2-2:さまざまな「キャリアアップ」の道筋
  ●ディレクション・監督の仕事に進む
  ●営業代行、コーディネーションの仕事に進む
  ●同業者を助ける仕事に進む
  ●同業のフリーランスを教育(育成)する仕事に進む
  ●同業者を集めて会社を作る(法人成りする/組織化する)
  ●業界を変える&進化させる仕事に進む
  ●業界の「理不尽」を解消し、健全化する仕事に進む
  ●新しいワークスタイル&ライフスタイルを創造する

 「50年後も生き残る!フリーランスのためのスキルアップ&キャリアアップ戦略ガイド」

 第1部 「フリーランスのためのスキルアップ戦略」編

 ▼1-1. 「スキル」とは何か

フリーランスにとって「スキル」は決定的に重要です。あなた自身がどのような「スキル」を保持しているかによって、あなた自身に「何ができるのか」が決まるので、あなたに仕事を頼もうと思ってもらえるかどうかが決まるからです。

そのためにも、「スキル」とは何か、ということをしっかりと理解しておくことが大切です。

「スキル」とは、すなわち「できること」であるわけですが、大きくふたつの要素に分解して考えることができます。ひとつは「知識」です。もうひとつは「技能」です。

 ● 「知識」とは

「知識」とは、何かを行うために必要な手順に関する理解、すなわちHOWTO(ハウツー)だけを指す言葉ではありません。「こうすればこうなる」ということだけではなく、「なぜ、こうするとこうなるのか?」といった構造に関する深い理解や、「なぜ、こういうときはこうするべきなのか?」「なぜ、こういうときはこうするようになったのか?」といった背景や歴史に関する深い理解も含む総体が「知識(knowledge)」なのです。そうした深い「知識」は、「知恵(wisdom)」と呼んでもいいものでしょう。

 ● 「技能」とは

「技能」は、実際に何かを行うことができる実践的能力を指します。手や体がやりかたを覚えていて、「理由はわからないけれど、できている」という状態もあり得ます。それは、ある意味では、「知識」の領域をも超えた深い能力であると言えるかもしれません。ですが、一般的には、「知識」をベースとして「技能」が形成されるものです。「どうすれば、できるのか?」を知識として学んだうえで、実践を通じて(実際にやってみて)、何かを行うことができるようになる、というのが一般的な学習の流れです。確かな「知識」の裏付けがあることで、「実現性」「再現可能性」が高まりますし(やろうと思えば確実にその状況を作り出すことができる、ということです)、お客様にとっての「安心」も高まります。「なぜこうするのか?」「なぜこうなっているのか?」ということを事前・事後に丁寧にお客様に説明ができれば、お客様は納得・安心するでしょうし、その知識レベルの深さによっては、感動すらしてもらえることになるでしょう(そう、「説明能力」も重要なスキルなのです)。

「知識」と「技能」、どちらが重要、ということではなく、どちらも大切です。バランスよく、学習と実践の両輪を回して、総合的にスキルアップを図っていくことが大切です。

 ● フリーランスが「知識」を学習(習得)するための効果的な方法

「知識」の習得のためには、粘り強い座学の学習こそが最も重要です。近道はありません。短時間でも構いません、学習時間を確保して、コツコツと知識を増やしていくことが大切です。世界はどんどん変化していきます。日々生まれる新しい情報のすべてをキャッチアップすることは到底不可能です。取捨選択が重要です。自分にとって必要だと考える領域を絞って、ひとつひとつ着実に知識を増やしていくようにしましょう。学習には根気が必要です。学習を継続していくためには、共に学ぶ仲間の存在ほど力になるものはありません。毎日の学習のルーティンを報告しあえるような仲間とのつながり(コミュニティ)をしっかりと作っていくことが大切です。今日では、TwitterなどのSNS上にも、自由に参加できる学習コミュニティのグループがたくさん存在しています。自分にマッチしたグループを探して、積極的に参加してみましょう!

なお、Wor-QのTwitterアカウントには、たくさんのフリーランスのフォロワーさんがいます。Wor-QのTwitterアカウントをフォローしてくださっている方同士、ぜひ、「Wor-Qのあの記事読みました?」「Wor-Qの投稿にコメントされているのを見て連絡しました!」というような形でつながりあっていただけたら嬉しく思います。Wor-Qには、職種グループ別に、あるテーマに沿って皆で悩みやノウハウを共有しあうことができる機能「Wor-Qコミュニティ」も用意されています。こちらもぜひ、積極的にご活用ください!

 ● フリーランスが「技能」を学習(習得)するための効果的な方法

「技能」の習得のためには、「実践」以外の方法がありません。とにかく実際にやってみることで、試行錯誤を通じて、「やれる」能力を磨いていくしかないのです。お金や時間に余裕があれば、自分自身で試しにテストをしてみる、というのが一番ベーシックな練習方法でしょう。

とはいえ、現実的には、技能習得のためだけに「試しにやってみる」余裕がないことも多いでしょう。最も効率的に、実際の仕事に適用できる水準の技能を習得するための方法は、「仕事の中で、実践して、新しい技能を習得する」というものでしょう。どんな仕事であれ、その一部に「はじめて挑戦すること」が含まれている場合があります。仕事のなかでそうしたチャレンジを積み重ねていくことで、どんどん技能を高めていくことができるのです。

しかしながら、こうした仕事を引き受けることにはリスクもあります。「失敗する=できない」可能性があるからです。ですから、仕事を引き受ける前に、しっかりと下調べを行い、「こうすればできるはずだ」という見通しを立てておくことが大切です。また、誠実さを重視するならば、お客様に対して、「この部分は自分も未経験だ」ということを伝えて、その部分の報酬を減額していただくなどして、相互に納得感のある取引の形としていくことも大切なことでしょう。また、もしものときに備えて、損害賠償責任をカバーしてくれる保険に加入しておくのもひとつの方法です。フリーランスのための「Wor-Q(ワーク)共済」には、「賠償補償制度」というオプションも用意されています。ぜひ一度、加入を検討してみてください!

いずれにしても、やってみなければ、いつまで経っても、やれるようにはなりません。勇気をもって、どんどん新しいことに挑戦していくようにしましょう。そして、繰り返し繰り返し、やってみることです。練習の繰り返しこそが、技能を磨いていくことにつながります。

 ● 「スキル」と「ケイパビリティ」 ~「スキル」だけでは仕事にならない~

「ケイパビリティ」という言葉があります。聞き慣れない言葉です。どういう意味なのでしょうか。「スキル」は、「知識」と「技能」の組み合わせであって、その両輪で「何かをすることができる」という能力を指すものでした。例えば、あるプログラミング言語についての知識を持っていて、実際にプログラムを組むことができれば、「プログラミングのスキルを持っている」と言えるでしょう。しかし、ただ単に、「プログラミングのスキルを持っている」からと言って、お客様が求めているシステムを提供できるとは限りません。このように、「スキル」をもとに、実際に、お客様が求めているもの(状態)を実現することができる能力(=実現力)のことを「ケイパビリティ」と呼びます。

「××という道具を使うことができます」「●●というソフトウェアを使うことができます」というだけでは、お客様にとっての価値とはならないことがあります。お客様は、なんらかの悩みや課題、目標や夢を持っています。そこに応えてはじめて価値になります。そのためには、持ちうるスキルを総動員するのは当然のこと、それだけではなく、「お客様の●●を解決する」ために必要なあらゆるものごとをかき集めて、組み合わせて、提供していかなければなりません。その組み合わせの能力こそが「ケイパビリティ」なのです。お客様の状況は毎度毎度異なるものです。応用力が必要です。状況を捉えて、何が必要とされているのかを明確にし、必要とされるものを作っていかなければならないのです。これでもってはじめて価値を生み出せたことになり、お客様から報酬を得るにふさわしい「仕事」ができたことになるのです。誰にも必要とされないスキルをいくら磨いても、残念ながら、仕事にはつながりません。いくら超人的な圧倒的スキル(知識と技能)を兼ね備えていたとしても、その力を活用して「お客様にとって価値ある状態」を作り出すことにつなげられなければ、仕事にはつながらないのです。

 ● 真のプロフェッショナルとは

お客様にとって頼りになる「プロフェッショナル」とは、どのような存在でしょうか。それは、望んだことに完璧に応えてくれる存在でしょう。そして、自分自身でも気付いていなかったような「実は望んでいたこと」にすら応えてくれるような存在でしょう。真の「プロフェッショナル」は、高いケイパビリティを有しています。ケイパビリティ、つまり、お客様が望んでいる状態を作り出すことができる能力は、何から構成されるのでしょうか。これも、ふたつに分けて考えることができます。ひとつは、「顧客理解力」、そして、「変換力」です。

「顧客理解力」とは、相手が何を必要としているのかを引き出し、整理し、合意形成する能力です。プロフェッショナルは、相手以上に相手を深く理解する能力を有しています。ヒアリング&カウンセリングの技術だけにとどまりません。安心感・信頼感があるからこそ、本音・本心をさらけだせるものです。そうした安心・信頼を構築する能力が決定的に重要です。信頼を得るためには、お客様の属する業界に関する豊富な知識をしっかりと習得していくことが重要です。

「変換力」とは、こうして整理された「お客さまが必要としているもの/望んでいる状態」を実現するために、「どのようなものを用意して」「どのような手順と優先順位で」物事を進めていけばその状態を実現できるのかを組み立てていく能力を指します。よりカジュアルに「段取り力」と呼ばれることもあります。

こうした「顧客理解力」や「変換力」は、どうしたら高めていくことができるのでしょうか。昨今では、こうした能力についても、理論立てて解説された本がたくさん出版されています。まずはそうした入門書を一読するのもよいでしょう。そして、まずもって、「自分はプロフェッショナルなのだ」という意識を持つことが何より大切です。意識を持つことで、責任感・自覚が目覚めます。いっぽうで、「高いスキルを持っている自分はプロフェッショナルなのだ/プロの自分を信頼してくれ」という不必要なプライドを捨てることも大切です。あなたのスキルが、必ずしも、いま、お客様が必要としているタイプのスキルであるとも限りません。柔軟に、あくまでも「お客様本位に」、必要とされるものに忠実に向き合っていくことで、確かな結果を生み出すことができるのです。

「スキル」を軽視しないことも大切です。どれだけ熟練した「顧客理解力」と「変換力(段取り力)」を持ち合わせていたとしても、自分が提供できるスキルを持ち合わせていなければ、絵に描いた餅で終わってしまいます。それこそ無責任です。小手先で(口先で)なんとかしようと思っている、というふうに見えてしまうこともあります。「顧客理解力」と「変換力(段取り力)」の価値を高めるためにも、「スキル」が重要なのです。ほとんどの場合において使わないだろう、と思われるような特殊なスキルもしっかりと身につけておくことで、引き出しが増えます。「ここをこうすれば課題を解決できるはずだ」という提案の幅が広がっていくのです。したがって、自身の専門分野以外のスキルも積極的に吸収していくことが大切です。

 ● フリーランスにとっての「資格」の意義

最後に、スキルアップといったときに必ず話題として出てくる「資格」の意義について考えてみましょう。「資格」は、ケイパビリティを証明するものではなく、スキルを証明するものです。知識だけを証明するタイプの資格試験もあれば、技能レベルを証明するタイプの資格試験もあります(両方を兼ねたタイプの資格試験もあります)。

したがって、「資格」があれば(「高いケイパビリティを有している」という意味での)プロフェッショナルの証明になる、というわけではないものの、スキルの証明としては大変重要なものですので、積極的に挑戦して、取得を行っていくとよいでしょう。なにより、「資格取得を目指す」ということ自体が、学習のモチベーションになるものです。

しかしながら、「資格を取得したからといって、プロフェッショナルになれるとは限らない」という意識を常に持ち合わせておくことが大切でしょう。ケイパビリティが重要です。ケイパビリティの証明となるものはただひとつ、「過去に、このようなお客様を相手として、このような仕事をして、このように満足して頂けた」という仕事の履歴だけです。

 ▼1-2. 「スキルアップ」の先へ

スキル(およびケイパビリティ)は、仕事を行う際の基盤となる基礎的能力ですから、(努力すれば)誰にでも習得可能なもので、誰にとっても共通の普遍的能力です。したがって、「差別化」が難しく、純粋に、能力の差が問われる世界です。

フリーランスとしてのスキルアップを突き詰めていくと、スキル(およびケイパビリティ)のレベルでは勝負がつかないような地点まで達する時がやってきます。いわゆる「プロ同士の戦い」と呼ばれるものです。そこで「差」となるものは、いったいなんなのでしょうか。それは、「独自性」です。「あなたにしかできないこと」をどれだけ提供できるか?ということです。

 ● スキルの組み合わせ

それでは、どうすれば、独自性を高めていくことができるのでしょうか。まずは、「いくつかの専門能力を組み合わせて、同業者が提供することができないサービスを作り上げていく」道筋が考えられます。

クライアント(発注側)は、別々の専門性を持つふたりの外注先に分けて仕事をお願いしなければならないとすると、管理コストが2倍になってしまいます。これが、誰かひとりに任せればOK、ということになれば、管理コストを半分にすることができるのです。これだけでも大きな価値になります。「自分は〇〇の専門家だから」とかたくなにならず、積極的に、隣接領域の仕事にもチャレンジしていくようにしましょう。

隣接領域の仕事を組み合わせることで、「面」で仕事を受けられるようにするのも、独自性を高めていくためのひとつの方向性ですが、その方向での差別化はなかなか簡単ではありません。むしろ、一見すると関連性がまったくないような(両方ができるような人がほとんどいないような)、別々のスキルを組み合わせるほうが、独自性を築き上げるための戦略としては有効となることが多いものです。「〇〇の専門家なのに、△△もできる!」という意外性が、稀少性となって、高く評価されることもあります。「需要が多く、競合(ライバル)も多いけれども、手堅い仕事のスキル」と、「あまり需要は多くないけれども、競合(ライバル)が少なく、受注できれば大きな仕事につながる、珍しい仕事のスキル」を組み合わせるのが一番現実的なアプローチかもしれません。何か一つ、「突き抜けた(特殊な)スキル」を身につけておくことにトライしてみましょう。

このように、「スキルの組み合わせ」によって「独自性」を磨いていくためにも、複数の仕事に並行して取り組んでいく「複業」のアプローチは大変重要です。単線的なキャリア(一本足打法)はリスクが高いものです。さまざまな仕事を貪欲に経験しながら、唯一無二の独自性を築き上げていきましょう。

 ● 顧客領域の専門特化

もうひとつは、スキルというよりはケイパビリティの独自性という意味合いになりますが、「こうしたタイプのお客様のことなら誰よりもよく分かっている」というような「顧客に関する理解」についての専門性を深めていくアプローチがあります。

実際にそうしたタイプのお客様の仕事を積み重ねていくことによってしか、こうしたタイプのスキルの独自性は磨いていけないものですから、参入障壁も高く、おおきな差別化ポイントになります。

仕事を引き受けたお客様の「特徴」を分析して、その「特徴」を横展開しながら、同じ特徴をもったお客様に営業をかけて、仕事を積み重ねていくことで、こうした専門性(独自性)を作り上げていくことができます。

 ● パートナーコンサルタント化

ある特定のお客様について徹底的に深く理解し、盤石の信頼を勝ち取ることで、同業者がとても提供できないような、深いサービスを提供することができるようになります。「〇〇さんのことなら、私が一番よく理解している」という方向性での独自性の構築アプローチです。

フリーランスとしての収入を安定化させていくには、深い信頼関係で結ばれた継続顧客、すなわち「パートナー」を増やしていくことが大切です。一度こうしたパートナーシップを築いてしまえば、簡単に他者に仕事をもっていかれることもありません。「何かあったときに相談に乗ってあげる」「相手も気がついていないような課題をあぶりだしてあげる」といった、「保守」型のサービスを、月額料金で細く長く提供するサービスを、複数社に対して並行して提供していくことができる状態を作り出すことができれば、フリーランスでありながら、安定したストック型の収入基盤を築き上げることができるようになります。長いフリーランス人生を考えれば、こうした基盤を作り上げることは、生き残りのための重要な鍵になります。

「単発の仕事がおわったあとも、ずっと一緒にいてほしい」、そう思ってもらえるようになるためには、とにかく、顧客のことを徹底的に理解しようとすることが大切です。「じぶんは仕事を受ける側だから、言われたことだけきっちり終わらせておけばいいんだ」ということでは、その先に進むことはできません。そうしたスタンスでは、独自性あるサービスを提供できるようになれず、いつまで経っても激しい価格競争の中で、低単価の仕事を受け続けるしかなくなってしまうでしょう。

 ● ブランディング ~名前で仕事を取れるようになる~

このように、独自性のあるスキルを身につけて、他の人がなかなか提供できないような唯一無二のサービスを提供できるようになると、「〇〇な仕事だったら、■■さんにお願いするのがいちばんだね」「■■さんといえば、〇〇な仕事で有名な人だよね」というイメージが世の中に浸透していきます。これを「ブランド」といい、こうした「ブランド」を形作る営み「ブランディング」といいます。

ブランディングというのは「結果」です。ブランディング=イメージ戦略ではありません。何もないのにいきなりイメージを作ろうとして作れるものではありません。確かな仕事の成果を積み重ねていき、その成果における「独自性」を効果的にPRしていくことで、結果として、イメージが形成されていくのです。経験こそが重要です。近道はありません。

 ● クレジット ~名前そのものが価値になる~

そうしてブランディングが進んでいくと、いつしか、「仕事を探しにいく立場」から「仕事を依頼される立場」へと変化していきます。そして、あなたの仕事の成果に、あなたの名前がクレジットされるようになっていきます。あなたの仕事の成果にあなたの名前をクレジットすること自体が、発注者にとっての価値になるようになっていくのです。あなたのブランド自体がプレミアム(価値)になるのです。

あなたにファンがたくさんついており、あなたがあなたの仕事をあなたのファンに報告すること自体が、おおきなPR効果を生むということが発注者から期待されるようになれば、そのこともまた、あなたの仕事の価値になっていきます。

繰り返しになりますが、これも、あくまでも、質の高い仕事を積み上げていった結果としてそのような状態になっていくのだ、ということを忘れてはいけません。近道はありません。

 ● 戦略的に「仕事を選ぶ」

このように、スキルアップの先には、さまざまな世界が広がっています。こうした世界に辿り着くためには、どのような能力が必要なのでしょうか。それは、「仕事を選ぶ能力」です。世の中にはたくさんの仕事があります。いっぽうで、人生の時間は有限です。どんな仕事を、どのような順番で成し遂げていけば:

•独自性のある「スキルの組み合わせ」を実現できるようになるか?
•顧客領域の専門特化ができるようになるか?
•あるお客様にとってかけがえのないパートナーとなることができるか?
•じぶんのブランドにつながるような仕事となるか?
•じぶんの名前を出した仕事ができるようになるか?

ということを戦略的に考えたうえで、「いま、なんの仕事を引き受けて、取り組むべきなのか」を決定していくことが重要なのです。「仕事ならなんでもいい」と脈略なく仕事を受け続けていると、スキルアップの先にある世界に辿り着くことはできません。「戦略的に仕事を選んでいく」。これが、スキルアップ、そして、スキルアップの先にある世界を歩いていけるようになるための重要なポイントです。

 ● 「受託仕事」と「じぶんの仕事」を組み合わせる

あなた自身が理想とする「独自性」のビジョンを描いてみましょう。あなたは、どんな仕事人となりたいですか?その、理想のイメージが、ビジョンです。そうしたビジョンを実現していくために必要な仕事を、ステップバイステップで、ひとつひとつ積み重ねていきましょう。

ですが、そうして進んでいく過程においては、どうしても、必要な(自分が求めるタイプの)仕事に出会えないこともあります。そういうとき、どうしたらよいでしょうか?

あなたはフリーランスです。仕事は、必ずしも、委託を受けなければできないものではありません。自分が、「こういうものを作れる人だ、ということを証明したい」「世の中に、こういうものが、サービスとしてあったらいいな、と思うものがある」とするならば、クライアントから発注を受けずとも、じぶんの事業として、自分で作って、自分で販売をしてみればよいのです。

そうして、いわゆる「受託仕事」と、「じぶんの仕事(じぶんの事業)」を組み合わせることで、よりスムーズに、自身が望む独自性のビジョンの実現に向けて前進していくことができます。フリーランスは、自由なのです。仕事は、自分で作り出すこともできるのです。とにかく、さぼらないことです。そして、めげないこと、あきらめないことです。がむしゃらに働いて、スキルを磨き、世の中に求められているであろうものを作り続け、世に問い続けていけばよいのです。そうすれば、結果として、あなた自身の独自のブランドができあがっていることになるでしょう。

「仕事を通じた自己実現」というのは、夢物語ではなく、現実に実現可能なものなのです。せっかく「フリーランス」という険しい道を選んだのですから、夢を夢で終わらせず、目指す道をひたすらに歩んでいってみてください。

 第2部 「フリーランスのためのキャリアアップ戦略」編

 ▼2-1. はじめに ~フリーランスにとっての「キャリアアップ」とは何か~

フリーランスには定年はありません。フリーランスとしての仕事人生は、長い人でいえば50年を超える期間に及ぶことも考えられます。それだけの長い期間において、環境も、あなた自身の状況も、まったく変化がない、ということは考えにくいものです。環境の変化、あなた自身の状況の変化に応じて、仕事のかたちを変化させていくことが必要になる局面が必ずやってきます。

会社組織の中で働くのであれば、専門職から管理職への「キャリアアップ」という道があります。自身が積み重ねてきた「経験」を活かすことで、自分自身が動くのではなく、人・組織を動かして物事を形にする、という「マネジメント」の仕事へと、徐々に仕事のかたちを変えていくことができます。

フリーランスの場合はどうでしょうか。フリーランスは、個人事業主です。基本的に、あなた自身が、あなた自身のスキルに基づいて、仕事を行うしかありません。ですが、そんなフリーランスにも、さまざまな「キャリアアップ」の道があります。あなた自身の仕事の経験を活かして、「あなた自身があなた自身のスキルでもってお客様にサービスを提供する」以上に社会に対して大きな価値を提供できるような仕事のカタチを作り上げていくことができるのです。

 ▼2-2. さまざまな「キャリアアップ」の道筋

フリーランスにとっての「キャリアアップ」の道筋には様々なものがあります。あなた自身の得意分野や「やりがいを感じるポイント」と照らし合わせて、「じぶんに向いている」と思える方向にキャリアを発展させていきましょう。

 ● ディレクション・監督の仕事に進む

自分自身が現場で積み重ねてきた仕事経験を活かして、仕事のオーナー(予算をもって、仕事を発注する人)と、実際に現場で仕事を行う人たちの間に入って、進行管理する役割の仕事があります。業種によって異なりますが、ディレクション業・監督業と呼ばれるものです。自身が現場で頭と手と足を動かして仕事をしてきた経験を持つ人こそ、「どうすれば、働く人たちが、効率よく、安全に、なおかつ、ひとりひとりの才能がフルに発揮されるように、プロジェクトを進行させることができるのか」がよくわかるものです。

もちろん、ディレクション・監督の仕事を担うためには、現場で仕事をこなすために必要となる個々のスキルについて熟知しているだけでは足らず、そうしたスキルを持った人に「適切に動いてもらう」ための「マネジメント」に関する専門技能が必要です。ただただ現場で経験を積むだけで、自動的にディレクション・監督の仕事ができるようになるわけではないのです。

「マネジメント」に関する専門技能はどうやって習得していけばよいのでしょうか。まずは、日頃から、現場で仕事をしながら、自分自身の仕事だけに集中するのではなく、全体を俯瞰でみて、「どうすればよりよくゴールを達成することができるのか」自分なりに考えながら仕事をしていくことで、マネジメントの基礎的素養を養うことができます。

プロジェクト・マネジメントの体系的理論や、ディレクション・監督に関する実践的手法論の数々を座学で学習したり、取引のある(あった)発注側の企業等にリファラル転職(紹介を通じた転職)をして数年間発注側で業務経験を積むなどしたりして、ディレクション・監督に関する実践的技能を積み重ねていくのもよいでしょう。あなたがもしも、「全体を俯瞰して物事を細かく管理する」ことに特にやりがいを感じるようであれば、そうした方向にキャリアを展開していくのもよいでしょう。

 ● 営業代行、コーディネーションの仕事に進む

フリーランスとして経験を積んでいくことで、たくさんのお客さまとのつながりができていきます。あなた自身のスキルが高まり、あなたに多くのお客様から引き合い(仕事の依頼)が来るようになると、いずれ、自分ひとりではすべての仕事依頼をさばけない状態が生まれてきます。その流れの中で、あなた自身が、次第に、フリーランス仲間に仕事を紹介するような立ち位置になっていくことがあります。そして、その延長線上として、フリーランス仲間(とりわけ、まだスキルを高めている最中のフリーランス達)の営業活動を代行してあげたり、(あるプロジェクトの実現を目指そうとしている)発注主が探している「特殊な技能や才能をもつ人間」を発注主の代わりに見つけ出して間を取り次いであげたりするようなことが、コーディネーションとしてのビジネスに発展していくことがあります。

あなたがもしも、広くさまざまな人・企業と交流し、マッチングさせることにやりがいを感じるようであれば、こうした方向にキャリアを発展させていくのもよいでしょう。

 ● 同業者を助ける仕事に進む

また、あなたが高いスキルを持ち、同業者の中でも知られた存在になると、困ったときに助けを求められるような局面も増えていくことでしょう。そうして、あなたのまわりの仲間が受けた仕事をサポート・アドバイスしてあげるような仕事が生まれてくるようになります。ひとつの仕事の中には、比較的簡単にこなせる部分と、難易度が高い部分がまじりあっているものです。そのうちの、難易度が高い部分だけを、依頼を受けて代わりに形にしてあげるような、スーパーお助けマン的な仕事にシフトしていくことで、得られる報酬の水準を高めていくこともできます。「緊急トラブル時の駆けつけ支援」のような業態も同様です。なによりこうしたカタチの仕事は、同業者からの感謝と尊敬を得られるものですし、あなたがもしも、「困った人を助ける」ことに特にやりがいを感じるようであれば、そうした方向にキャリアを展開していくのもよいでしょう。

 ● 同業のフリーランスを教育(育成)する仕事に進む

フリーランスとして経験を積み重ねていくことで、ノウハウがどんどん貯まっていきます。成功体験ばかりではなく、失敗経験も貯まってくるでしょう。こうした豊富な経験を活かして、これからフリーランスを目指そうとしている人、もしくは、フリーランスの道を歩み始めたばかりの人に対して「スキルの教育を行う」仕事にキャリアを発展させていく方向性もあります。

マンツーマンのラーニング・セッションを提供するようなサービスのカタチもあるでしょうし、オーソドックスにスクール(学校)を立ち上げるカタチもあるでしょう。学びのための物理的な場(空間・設備等)を提供するカタチ(「仕事道具のレンタルや業務用卸売および使用方法のトレーニング」というカタチも含む)もあるでしょうし、「ノウハウをコンテンツ化(文章化、映像化 etc)して電子教材として提供していくカタチ」もあるでしょう。さまざまなカタチが考えられます。

あなたがもしも、「人に教える」「人を育てる」ということにやりがいと生きがいを感じるようであれば、こうした方向にキャリアを発展させていくのもよいでしょう。

 ● 同業者を集めて会社を作る(法人成りする/組織化する)

さて、ここまで書いてきたようなキャリアアップの方向性をすべて包括する、究極のキャリアアップの方向性があります。それは、自身の個人事業を法人化(会社化)して、仲間を集めて、共に事業を進めていくカタチとする、というものです。いわゆる「法人成り」と呼ばれるものです。フリーランス(個人事業主)であっても、仲間に業務委託形式で仕事をお願いすることもできますし、給与支払事務所としての適切な手続を行うことで、(常用雇用者として)「人を雇う」ことも可能です。ですが、「人を雇う」のであれば、株式会社を設立するなどして法人成りすることで、信頼度も高めることができ、人を雇いやすくなります。外の会社との取引もしやすくなるでしょう。

会社というものは、同じ会社で働く仲間と「助け合って」事業を進めていくための仕組みです。

●まだまだスキル習得中の人と、ベテランの熟練者が、支え合って仕事を進めていきます。仕事を通じて、ベテランが初心者をトレーニングしていきます。
●多くの場合、会社の中に、管理者的な仕事をする人が立ち、仕事量の適切な分配を行っていきます。何をして、何をしないか、何をどういう順番で進めていくのか。会社として意思決定を行っていきます。
●仕事を獲得する「営業」や、仕事以外のさまざまな事務的な作業・経理や契約手続等の「管理業務」を専門で担当する人が置かれることで、現場の専門職は、現場仕事だけに集中できるようになります。
●誰かが仕事がないときは、誰かの仕事を手伝ってもらいます。誰かが風邪やケガで休まなければならないときは、誰かが代わりに助けます。

このように、「会社」という仕組みは、何もかも自分自身でこなさなければならず、絶えずリスクにさらされているフリーランスとしての立場から見ると夢のように思える、素晴らしい仕組みなのです。もしもあなたが、上記で示したキャリアアップの方向性すべてに魅力とやりがいを感じるようであれば、思い切って、自分自身で営んでいる事業を法人化して(会社化して)、仲間を集めて、皆で事業を進めていくカタチに挑戦してみるのもよいでしょう。

 ● 業界を変える&進化させる仕事に進む

ここまでのキャリアアップの方向性は、基本的に、あくまでも、あなたが働く業界になんの課題もなく、これからも変わらずに安定した仕事の需要が存在していることを前提としたものでした。しかしながら、実際には、いかなる職種・業界であれ、さまざまな課題を抱えていることが常態ですし、年々、さまざまなカタチに変化していっているものです。

あなた自身、長年、ある職種・業界で働き続けることでさまざまな課題に気が付き、そうした課題に苦しめられることもあるでしょう。これからもその仕事を続けるために、「業界全体として、こういうところを変えていかなければならない」といった変革の必要性を強く感じるようになる場合もあるでしょう。

そこには、あなた自身が率先して、「ある職種で働く人たち、すなわち業界が抱えている課題を解決するための新しい仕組み」を作り上げたり、「業界全体を新しい方向に変革していくための新しい仕組み」を作り上げたりするプロジェクトを立ち上げる、というキャリアアップの道が拓けているのです。

例えば、非効率な業務を改善するためのITシステムを立ち上げて、同業の皆に広く使ってもらえるような形が考えられるかもしれません。業界全体の非効率を変えるための新しい取引の仕組みを、ITを活用して組み立てる形も考えられるかもしれません。こうした新しい仕組みを「事業として」立ち上げるためには、それなりの規模の資金と、時間と労力を必要とするものです。おそらく、あなたひとりで実現させることは難しいものとなるでしょう。そうしたプロジェクトこそ、株式会社を設立するなどして、仲間の力を集めて取り組んでいくべきです。あなた自身が、高いスキルを持ち、業界の中でも信頼されている存在であるならば、そうした挑戦の道に思い切って転じていくのもよいでしょう。

 ● 業界の「理不尽」を解消し、健全化する仕事に進む

そして、いかなる業界においても、求められる変化は、「成長のための革新」だけではありません。どんな業界にも存在する「不条理」や「理不尽」を解消するための運動もまた、必要です。誰しもが、理不尽に苦しめられることなく働いていくことができるように、そうした問題点を整理し、情報発信をし、解決に向けて各所に働きかけるようなプロジェクトの担い手も求められています。業界の「闇の部分」をあなたがもしも本気で変えていきたいと考えるならば、ぜひ、そうした方向で、キャリアを進めていってください。結果的に、業界を明るく健全な状態に変えていくことができたならば、あなたは多くの同業者・関係者から、感謝と尊敬を集めることになるでしょう。

 ● 新しいワークスタイル&ライフスタイルを創造する

フリーランスになると、(「所定労働時間」や「コアタイム」といった概念が存在しないため)働くことと、生活することとの間の境目が薄れていきます。仕事の中に暮らしがあり、暮らしの中に仕事がある、そうした状態が自然なものになっていきます。逆に言うと、どのような暮らしのカタチとするかによって、どのような仕事を提供できるかが変わってくる、ということでもあります。わかりやすい例でいえば、首都圏で暮らすのか、地方で暮らすのかによって、仕事のカタチも変わるはずです。首都圏であれ地方であれ、都市部と都市近郊、それから自然あふれる地域で暮らすのかによって、仕事のカタチも変わっていくはずです。

つまり、あなた自身の生活のカタチを変えることで、いままであなたが提供できなかったような、そして、いままで世の中に存在しなかったようなサービスをお客さまに提供できるようになる可能性がある、ということなのです。フリーランスは、自由です。働く時間も、場所も、働きかたも、あなた自身が設計していくことができます。「出社」という概念はありません。もちろん、お客様先に出向かなければならない場合もあるでしょう。ですが、十分なスキルをもったあなたなら、「どこでどんなお客様のために奉仕するのか」を、あなた自身で選んでいくことすらできるのです。ぜひ、固定観念にとらわれず、あなたらしいライフスタイルを作り上げていってください。そうすることで、結果的に、いままで世の中に存在しなかったような画期的なサービスが生まれるかもしれません。

今、世の中は変化が必要な局面にあります。どのような方向性に変化していくのがよいのか、どのような方向性への変化がありうるのか、皆が迷っている局面にある、と言ってもよいかもしれません。フリーランスとしてスキルとキャリアを積み上げてきたあなたなら、新しい暮らしかたと働きかたのモデルを作り上げる力を十分に持ち合わせているはずです。これからの時代を切り拓くパイオニアとして、ぜひ、あなた自身が考える理想のワークスタイル&ライフスタイルを大胆に創りあげ、積極的に情報発信をしていってください。きっと、多くの人があなたの姿を参考としてくれるでしょうし、その中で生まれた新しいつながりから、きっと、あなたが想像もしなかったような新しい仕事が生まれるかもしれません。情報発信そのものが収入となることもあるでしょう。生きること自体が仕事となり、仕事をすること自体が生きることである、と思えるような幸せな状態に辿り着けたら、それはきっと、理想のキャリアとなることでしょう。

仕事は、つながり(縁)からしか生まれません。相手がいなければ、仕事というものは成立しないのです。誰かに「仕える(奉仕する)事」と書いて「仕事」です。あなたの暮らしの中で生まれた人とのつながり(縁)を通じて、あなただけのキャリアを切り拓いていってください。そうした道筋こそ、現代における理想の「キャリアアップ」のカタチではないでしょうか。収入を増やしていくことや、偉くなったり有名になったりすることだけが「キャリアアップ」のゴールではないはずです。フリーランスとして働くみなさんひとりひとりのキャリアの道筋が、社会全体の未来を明るく切り拓くものとなっていくはずです!

フリーランスとしてのキャリア開拓の旅は、孤独なものかもしれません。ですが、全国各地に、同じように働いている仲間がいます!ぜひ、インターネットを通じて、つながりを作っていってくださいね。Wor-QのTwitterアカウントには、たくさんのフリーランスのフォロワーさんがいます。Wor-QのTwitterアカウントをフォローしてくださっている方同士、ぜひ、「Wor-Qのあの記事読みました?」「Wor-Qの投稿にコメントされているのを見て連絡しました!」というような形でつながりあっていただけたら嬉しく思います。Wor-Qには、職種グループ別に、あるテーマに沿って皆で悩みやノウハウを共有しあうことができる機能「Wor-Qコミュニティ」も用意されています。こちらもぜひ、積極的にご活用ください!

本特集に掲載しております情報は、正確を期すべく、しっかりと確認を行っておりますが、あくまでも参考としてご利用いただきますようお願いをいたします。

構成:旦悠輔(Wor-Q管理人 兼 Wor-Q Magazine編集長)

大学卒業後16年間に渡り大手コンサルティング会社・大手ポータル企業等でIT関係の仕事に従事したのち、フリーランスとして独立。Webサイト運営に関するコンサルティングから、システム設計・開発・運用、コーディング・デザイン、そして中身のコンテンツの企画制作(文章/イラストレーション&グラフィック/写真&映像)に至るまでオールマイティにこなすマルチフリーランサー。個人事業主としての屋号も、「肩書や職種の枠組にこだわらず、課題解決やイノベーションのために必要なことはなんでもやる」という決意をこめて「旦悠輔事務所」としている。当事者(フリーランス)のひとりとして、「フリーランスという働きかた」に関するさまざまな課題を解決に向かわせていきたいという思いをもって、Wor-Qの運営に携わっている。

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    新・特集シリーズ第2号<後編>  「声優の働きかた、その<あるべき未来>を描きだそう」 「文化を守りたい」ーーーフリーランスとして働く声優が声をあげ続ける理由
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