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特集公開日:2021年4月30日 by Wor-Q MAGAZINE 編集部

Wor-Q MAGAZINE 特集第4号のテーマは、「フリーランス1年目をどう生きるか」です。4月は新年度シーズンです。新しく、フリーランスとしての道を歩みはじめた方も多くいらっしゃることでしょう。きっと、希望と不安の両方が胸に満ち溢れているのではないかと思います。特に、「副業」ではなく「独立」という形でフリーランスの道を選ばれた方は、不安な気持ちのほうが大きいかもしれませんね。「もしものときは再就職する」という道も無いわけではないでしょうが、それは決して簡単なことではありませんし、独立するからには「これからはずっとフリーランスとして生きていこう」という決意のもとに道を選ばれたはずです。独立をしたからには、「自分らしく」「できる限り長く」フリーランスとしての仕事を続けていきたいと考えている方がほとんどではないかと思います。

本特集では、「フリーランス1年目をどのように歩み出していくのがよいのか」についての「ヒント」をまとめています。よくある成功ノウハウ集のようなものではありません。あくまでも、「最初にこういうことを考えておくとよいでしょう」という「自問自答のためのガイド(=地図)」として活用していただくためのものです。ぜひ、じっくりと、考えながら読み込んでみていただけたら幸いです。

本特集は、フリーランスとして生きる道を選ばれたばかりの方、または、まさにこれから選ぼうとしている方のための特集ですが、ベテランのフリーランスの皆さんにも、振り返りの意味で、時折読み返してみていただきたいと思っています。

目次

「フリーランス1年目をどう生きるか」

1. まずは「原点」を定めよう
  ▼「初心」を言葉にしよう
  ▼「ミッション」と「創業趣意/創業理念」を言葉にしよう
  ▼屋号を定め、看板を掲げよう
  ▼名刺を作ろう
  ▼WEBサイトを立ち上げよう
  ▼お金を動かす準備をしよう ~頼れる銀行に口座を開こう~
  ▼取引をする準備をしよう ~しっかりした契約を交わしていくために~
  ▼仕事道具を揃えよう ~道具への支出は「投資」です~

2. 「原点」から、一歩一歩、前に向かって歩き出そう
  ▼活動拠点(仕事場)を決めよう
  ▼はじめてのお客様を見つけよう ~新規獲得営業において大切なこと~
  ▼つながりを育んでいこう ~リピーターを作り、ブランドを築きあげるには~

3. 遠くにある「到達点」を見つめてみよう
  ▼20年計画・30年計画を立てておこう ~「定年」も「老後」もありません!~
  ▼1年目こそ、まず守りを固めよう
  ▼1年目の終わりに~フリーランスに「到達点」はありません~

 「フリーランス1年目をどう生きるか」

 1. まずは「原点」を定めよう

「初心」を言葉にしよう

さあ、フリーランス1年目のスタートです。何から始めたらいいのか・・・、迷っている暇もないほど、やることが盛りだくさんであることに気が付くでしょう。そう、自分が動いて稼がなければ、自分の口座に自然にお金が振り込まれてくるなんていうことはないわけですから・・・。立ち止まっていたら、すぐに資金が尽きてしまい、にっちもさっちもいかなくなってしまいます。ですから、「とにかく早く仕事を獲得して働きはじめたい」、そういうふうに思うのも当然のことですよね。ですが、これから、長い長いフリーランス人生が始まるわけです。その最初のステップとして、「初心」、つまり、「自分は、なんのために、どんな思いで、独立してフリーランスになる道を選んだのか?」ということを言葉にすることをおすすめしたいと思います。

「初心」を言葉にする?そんなことして何か意味があるの?時間ないよ!と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。なぜ、「初心」を言葉にすることが大切であると言えるのでしょうか。それは、そうした「初心」の言葉が、いつか必ず、あなたを支えてくれることになるからです。フリーランスとして仕事をしていく過程においては、必ず、山もあれば谷もあります。収入という意味でも波がありますし、あなた自身の健康状態にも、大波小波が生じることでしょう。調子が良い時もあるでしょうが、調子が悪い時も必ず出てくるはずです。でも、どんなときでも、あなたの代わりはいないのです。あなた自身が、あなた自身の仕事をするより他ないのです。きっと、信じられないことも起きるでしょう。フリーランスという弱い立場につけこんで、とんでもないことを言ってきたりする人だって現れるかもしれません。そうした「くじけそうな時」に、あなたを支えてくれるのが、「初心」の言葉なのです。

「自分は、なんのために、どんな思いで、独立してフリーランスになる道を選んだのか?」、しんどい時、ここに立ち戻れば、きっと、踏ん張れるはずです。中には、自分自身で希望してフリーランスとしての道を選んだわけではない人もいらっしゃるかもしれません。それでも、もう、フリーランスの道を歩きはじめようとしているのであれば、自分なりの決意を定めておく必要があります。「フリーランスとなった今、自分は、何を大切にして、仕事をしていくのか」。そうした決意こそが、あなたの「初心」となります。「初心」は、まっさらなスタートの瞬間においてしか、感じることができない心境です。1週間、いや、1日でもよいでしょう、あなたにとってのかけがえのないスタートの瞬間に、こうした「初心」を言葉にまとめておく時間を確保することをおすすめしたいと思います。

「ミッション」と「創業趣意/創業理念」を言葉にしよう

この「初心」の言葉は、あなた自身を守ってくれる言葉となるばかりではなく、あなたから溢れ出して、あなたを取り巻く周囲の人々にも届いていく言葉になり、そのことで、あなたに新しい「よき仕事」をもたらしてくれる言葉ともなってくれることでしょう。

ただ単に「仕事を頼む」ということだけであれば、誰に頼んでも同じかもしれません。ですが、どうせ仕事を頼むなら、自分と同じ情熱をもって心底尽力してくれる人に頼みたいと思うものです。あなたを心から信頼して「あなたにお願いしたい」といってくださるビジネスパートナー(取引先)とつながっていくためにも、あなたの「初心」を、周囲に伝わりやすいような言葉に変えていきましょう。

「なんのために」、つまり、「自分の仕事を通じて、世の中のどんな課題を解決していこうとしたいと思っているのか?」を言葉にしたものを、ビジネス用語で「ミッション(使命)」と呼びます。あなたはフリーランスであるわけですから、何かしらの専門的なスキルをもっていて、そのスキルでクライアント(依頼主)の要望に応えることを業としようとしているはずです。そのときに、ただ単に「これができます」「あれができます」ということだけでなく、「自分のスキルを活かして、最終的に、世の中にこういう価値を生み出していきたいと思っているんです」というような「思い」の部分まで踏み込んで広く周囲に発信していくことができたならば、きっと、その思いに共鳴してくださる方が、あなたの価値をきちんと認めた上で、あなたのもとに仕事を頼みにきてくれることでしょう。逆に、そうした思い(ミッション)を語ることができず、ただ単に「こういうことでしたら、●●円でできます」というようなことしか周囲に提示できないようだと、どうしても、「あなたのスキルと、相手のお金を交換するだけの関係」で終わってしまい、あなたの価値を本当の意味で認めてもらえるような関係性を築き上げるところまで辿り着くことが難しくなってしまうことでしょう。

このように、「ミッション」の言葉は、仕事における周囲との深い信頼関係構築のために非常に重要な役割を果たすものです。ですが、「ミッション」を言葉にするだけでは、実際のところ、信頼を得ることはなかなか難しいものです。なぜなら、その人が、なぜ、そうした「ミッション」を抱くようになったのかが分からなければ、「ミッション」を語る言葉に魂がこもらないからです。世の中のため、人のため。そうした思いを言葉にするのは、ある意味では簡単なことです。ですが、「なぜ、そういう思いを持つに至ったのか?」を言葉にするのは、簡単なことではありません。「なぜ、そういう思いを持つに至ったのか?」、つまり、ヒストリー(歴史)、独立創業の原点を言葉にしたものを、「創業趣意/創業理念」という言葉で呼びます。もしもそうしたヒストリーを言葉にすることができたならば、あなたが語る「ミッション」の言葉は、とても重みのある言葉として、人の心を打つものになっていくことでしょう。逆に、そうしたヒストリーの裏打ちのない「ミッション」の言葉は、とても薄っぺらいものになってしまうはずです。

「ヒストリー、そんなの、自分にあるかなあ・・・」なんて、ちょっと不安になってしまいましたか?そんなに心配することはありません。あなた自身がいままで積み重ねてきた仕事、人生の物語を振り返ってみてください。きっと、そこに、あなただけの「創業趣意/創業理念」の核が見つかるはずなのです。なぜ自分はフリーランスの道を選んだのか?それ以前に、なぜ自分はこの仕事を選んだのか?そこを丁寧に紐解いていけば、きっと、答えが見つかるはずです。気負わず、あるがままに、あなた自身が歩んできた道を振り返ってみてください。

屋号を定め、看板を掲げよう

このようにして、あなた自身の「ミッション」と「創業趣意/創業理念」を言葉にすることができたならば、あなたのフリーランスとしての事業には、エンジンがかかったことになります。あなたの思いは、いま、熱く燃えていて、いつでも動き出せる状態にあるはずです。動き出しの手始めに、まず、あなたが書き上げた「ミッション」と「創業趣意/創業理念」の文章を短く凝縮させた「屋号」をつくりあげましょう。

「屋号」とは、あなたがフリーランスとしての仕事をしていく際に使用できる名称のことです。「屋号」は、個人事業主としての「開業届」を税務署に提出する際に記載する必要があります。「開業届」は開業後1か月以内に提出をしなければならないものですから、「屋号」を決めるまでのところは、できればフリーランスとして独立する前の準備段階で終わらせておくことが望ましいでしょう。「屋号」は大切なものです。あなたの、あなただけのビジネスの、看板なのですから。時間がないなかで焦って考えた、自分でも満足していない屋号の看板を掲げてビジネスをするのでは・・・、決してうまくいきませんよね。時間をかけて、魂のこもった「屋号」を作り上げてみてください。「屋号」を見ただけで、あなたの自身の「ミッション」と「創業趣意/創業理念」が伝わるような・・・。

名刺を作ろう

屋号も決まったら、いよいよ、外に向かって出ていく時です。屋号を記した名刺を作りましょう。ご自身の職種がデザイン関係の職種であれば、もちろん、自分自身のデザインスキルの証明として自分自身で作るのがいちばんでしょう。

自分では作れません!という方である場合には、人にお願いすることになります。「この人なら」と思えるフリーランスのデザイナーさんに仕事をお願いすることで、「何かの時に頼ることのできるデザインのプロ」と関係を作っておくというのもよいでしょう。また、プロのデザイナーさんにお願いすることで、ありきたりのものではない、個性的な(自分の「ミッション」や「創業趣旨/創業理念」がしっかりとビジュアルに反映された)名刺を作り上げてもらうこともできるでしょう。

いっぽう、そこにはあまりこだわらない、シンプルなものをできるだけ安く早く大量に用意して、どんどん営業してまわりたい、という方もいらっしゃると思います。最近では、インターネットだけで注文を完了できる便利な名刺作成サービスもたくさん登場してきています。そうしたサービスを上手に使いこなしていくのもよいでしょう。(例)ラクスル|名刺印刷|https://raksul.com/businesscard/

WEBサイトを立ち上げよう

名刺片手にリアルに対面で挨拶回りをするような営業も大切なことでしょうが、時代は徐々に「オンライン」にシフトしつつあります。WEBサイトを拠点にインターネットを通じて自分自身の活動をPRしていくタイプの営業活動が、これからのスタンダードになっていくものと思われます。WEBサイトは、自分自身の「顔」のようなものです。フリーランスは信用がすべてですから、信用してもらうためにも、自分自身のことをできるだけ包み隠さず徹底的に情報公開し、「知ってもらう」ための努力を怠らないことが大切です。そのための最も重要なツールがWEBサイトであることは論をまたないでしょう。

それでは、WEBサイトをどうやって立ち上げていくのがよいのでしょうか。名刺と同じように、「この人なら」と思えるフリーランスのWEBデザイナーさんに仕事をお願いするのもよいでしょう。WEBで検索すれば、たくさんのWEBデザイナーさんの情報が見つかるはずです!

いっぽう、「自分で作ってみる」というのも一考の余地ありです。WEBサイトは、作って終わりではありません。あなたのビジネスが成長し、進化していくごとに、常に内容をバージョンアップしていかなければならないものです。その都度、プロの方に依頼して直してもらうのもよいでしょうが、自分自身でスピーディーに内容をカスタマイズできるのであれば、そちらのほうがスムーズだ、と考える人もいらっしゃるかもしれません。

Wor-Qには、プログラミングやデザインの知識や経験がない人でもWEBサイトを作ることができるような便利なサービスの情報をまとめた「お役立ちリンク集(「WEBサイト制作関係」)」がありますので、ぜひ参考にしてみてください。

お金を動かす準備をしよう ~頼れる銀行に口座を開こう~

さあ、あなた自身について、広く発信していく準備は整いましたね。いよいよ、まわりの人達とつながりをつくっていく時が来ました。あなたが真心をこめて行った仕事によって、お客さまが喜んでくださる。そして、お客さまが、喜んで、対価としての報酬をあなたに支払ってくださる。そのような状況が生まれた時、そこに、「お金を払う側が偉い」といった考え方に基づく、発注者と受注者の間の「いびつな上下関係」はありません。そこには、「お客さまに喜んでもらいたい」「この人にお願いしてよかった」。そうしたあたたかい気持ちによって築き上げられた「対等なつながり(パートナーシップ)」だけがあるのです。こうした「対等なつながり」の中で得られたお金は、お客様の喜びの結晶のようなものですから、あなたにとっても大変嬉しいお金となることでしょう。そうして得たお金は、大切に使っていきたいものです。会社で働いているときには、経理や財務の担当者がいるもので、経理や財務の担当者ではない限り、そうしたお金の流れは「会社任せ」で済むわけですが、フリーランスとなったあなたは、そうしたお金まわりの実務作業もすべて自身で行わなければなりません。そんな「お金の管理」をサポートしてくれるのが銀行なのです。

フリーランスとして仕事をする場合、1年に1回、「確定申告」と呼ばれる税金(所得税および消費税)の金額を確定させるための収支申告(報告)を行うことが必要になります。その確定申告の作業をスムーズに進めていくためにも、あなたが普段の生活で使用している銀行口座とは別の「事業用の口座」を新しく作成することをおすすめします。セキュリティやプライバシーの観点からも、事業用の口座を新しく作成することをおすすめします。

仕事をしていく中で、代金の受け取りばかりでなく、あなた自身がお金を支払う場合も出てくるでしょう。そうした入出金(決済)は、銀行口座振込によって行われるのが一般的です。最近では、インターネットでのバンキングサービスに注力したネット銀行も多数登場してきています。「振込手数料などの費用が抑えられるかどうか」・「オンラインバンキングの仕組みが使いやすいかどうか」といった点に加え、「ビジネスをサポートしてくれる各種金融サービスが充実しているかどうか」といった観点も意識しながら、あなたのビジネスを支えてくれる「頼れる銀行」で事業用の銀行口座を開きましょう。

▼代表的なネット銀行(個人事業主としての屋号付の口座を開設できる主なネット銀行)

PayPay銀行(法人・個人事業主向け)※旧ジャパンネット銀行
https://www.paypay-bank.co.jp/business/index.html

楽天銀行(個人事業主向け)
https://www.rakuten-bank.co.jp/smallbusiness/

GMOあおぞらネット銀行(法人・個人事業主向け)
https://gmo-aozora.com/business/

連合に関係する金融機関には、ろうきん、全銀連合に加盟する地方銀行があります。(詳しくは連合のHPなどをご覧ください)

取引をする準備をしよう ~しっかりした契約を交わしていくために~

お金を管理する仕組みも整ったら、いよいよ仕事をスタートできそうです。ですが、ここで焦って適当な仕事の受け方をしてしまうと、のちのち大変なことになってしまいます。しっかりと「契約書」を交わして、お互いに納得できる条件を細部まで詰めたうえで仕事を行うことが大切です。(参考:「お役立ちリンク集「契約」関係」)

契約書をはじめ、さまざまな紙の書類をやりとりするためには、自分自身が内容を確認・同意したことの証明としての「印鑑」が必要になるケースが多いものです。まずはしっかりと、必要な「印鑑」を揃えることからはじめましょう(参考:Wor-Q「相談事例集:契約書に押印がなくても有効でしょうか。」※要ログイン)。

最近では、紙の書類のやりとりを伴わずに契約を締結することができる「電子契約サービス」の利用も広がってきています。クライアント(発注者)から「電子契約でお願いしたい」と言われたときに焦らずに済むように、あらかじめ、代表的なサービスのWEBサイトを読みこんでおくなどして、利用方法を確認しておくとよいでしょう。「電子契約サービス」というと、なんだか難しそうな印象がありますが、実際のところ、とても簡単に利用できるものです。おそれず、前向きに、学習してみましょう!

▼代表的な電子契約サービス

DOCUSIGN(ドキュサイン)
https://www.docusign.jp/

CLOUDSIGN(クラウドサイン)
https://www.cloudsign.jp/

仕事道具を揃えよう ~道具への支出は「投資」です~

銀行口座や印鑑の準備と並行して、仕事道具も揃えていかなければなりませんね。身一つ体一つで稼ぐ!という方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの職種において、仕事を行うためには「道具」がどうしても必要になってきます。

会社に雇用されて仕事をする場合、仕事に必要な道具は、基本的に会社が費用負担をして用意してくれるものです。ですが、フリーランスの場合は、自分で手配しなければなりません。はじめのうちは、「何もかもが揃っていない」ことに気が付くでしょう。

フリーランス1年目は、収入がまだ立ち始めていない状況の中で、道具を揃えるために、たくさんの先行支出が必要になります。そのため、どうしても、道具選びにおいて価格重視で妥協してしまいがちです。ですが、仕事のパフォーマンスはほぼ道具で決まるものですし、安物を買ったらすぐに壊れてしまった、というのでは逆に損をしてしまうことになりかねません。仕事道具こそ、「投資」だと思って、一番良いと思えるものを購入するのがよいでしょう。

手元の初期資金だけでは十分な初期投資ができない、という場合には、個人事業主であっても利用できる「創業融資」が幾つかの金融機関で提供されています。各地方自治体に「創業支援」のためのサポート窓口も用意されていることも多いですから、そうした窓口を通じて、融資や資金繰りの相談をしてみるのもよいでしょう。

例|日本政策金融公庫|創業時支援
https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/riyou/sougyouji/

ところでフリーランスの場合、仕事のために必要な道具(器具・備品)の購入にかかった費用は、確定申告において経費として申請することができます。高額な道具(器具・備品)の場合には、何年かに分割して、費用を毎年少しづつ計上していくこともできます(※これを「減価償却」といいます)。また、「青色申告」と呼ばれる方法で確定申告を行う場合には、「欠損金(法人税法上の所得金額のマイナス)」を繰り越すことで、翌期以降の課税所得から差し引いていくことも可能になります。フリーランス1年目は、なにかとお金が出ていってしまうものです。1年目から「黒字」というのは、なかなか難しいものです(できた人はすごいです!)。1年目は欠損金が生じることも見据えて、事業開始のタイミングで開業届とともに速やかに「青色申告承認申告書」を提出しておくことが重要です(事業開始の日から2か月以内に提出しなければ、大事な1年目に青色申告を行うことができなくなります。したがって、1年目に生じた欠損金を繰り越していくことができなくなってしまいます)。

参考:国税庁|青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5762.htm

(なお、青色申告を行うには、一定の経理知識が必要になります。確定申告に関しては、Wor-Qのお役立ちリンク集「確定申告関係」も参考にしてください。)

さあ、いかがでしょうか、仕事道具もきっちり揃えることができたでしょうか?ここで揃えた道具は、何年もの間、あなたを支えてくれるものとなるでしょう。

 2. 「原点」から、一歩一歩、前に向かって歩き出そう

活動拠点(仕事場)を決めよう

さあ、いよいよ営業開始の時がやってきましたね!フリーランスとしてどれだけ高い技能を持っていたとしても、「業を営む」ということは決して簡単なことではありません。お客さまとつながって、商いを成立させていかないとならないからです。

お客さまとつながり、業を営んでいくための第一歩目が、活動拠点作りです。特に事務所やスタジオ、アトリエといった物理的な拠点を必要としない職種の方もいらっしゃるかもしれません。自らお客様先に出向く形の職種の方もいらっしゃるかもしれません。それでも、どのあたりのエリアを自分にとっての「ホーム」とするかを定めることが、事業を離陸させていく際にとても重要なポイントになります。日々の仕事を、どんな場所で行うか。それによって、どんな人と出会っていけるかが変わっていきます。人との出会いがなければ、ビジネスは生まれません。迷ったときは、初心に帰りましょう。「自分は、なんのために、どんな思いでフリーランスの道を選んだのか?」。初心に立ち返って、自分を必要としてくれる人がきっといるはずだ、と思える場所に、自らの活動拠点を設けましょう。

はじめてのお客様を見つけよう ~新規獲得営業において大切なこと~

活動拠点が決まったら、はじめてのお客様探しです。「フリーランスの仕事は信用がすべて」であるとよく言われます。信用とは何か、と言えば、それは実績の積み重ねでしかありません。「こういうお客様を相手に、こういうお仕事をさせていただいてきました」ということが、そのまま、あなたの信用につながっていくのです。その意味では、フリーランスとして動き出したばかりで「実績ゼロ」のあなたは、「信用ゼロ」の状態であると言えるでしょう。まずは、自分がしっかりとお客さまを満足させることができると思える仕事をきっちりとこなして、信用の貯金を増やしていくことが大切です。

それでは、どうすれば、「自分がしっかりとお客様を満足させることができると思える仕事」を得ることができるのでしょうか?そのためにはまず、「自分の強みは何なのか」を徹底的に分析することが大切です。ただ単に「※※ができます」というだけでは、必ず、価格競争に巻き込まれてしまいますし、ひどい場合には「買いたたき」を受けてしまう場合もあるでしょう(「買いたたき」についてはWor-Q用語集「買いたたき」も参考になります)。また、ただ単に「※※ができます」というだけでは、お客さまに満足してもらうことも難しいでしょう。なぜなら、「支払ったお金と釣り合うだけの仕事をこなしてもらった」というようにしか思ってもらえないからです。そうならないようにするためにも、他の人とは違う、自分だけの個性・オリジナリティ・特徴がどこにあるのか?をハッキリさせておくことが大切です。そして、そうした「自分の強み」を必要として下さるであろうお客様を自分から探し出し、ラブコールを送っていくことが大切です。

そのためにも、日々の暮らしや仕事の中で、「もし自分がこの人から仕事を頂けたら、ここはこういうふうにできるのになあ」というような工夫や改善のアイディアを書き留めておくことが大切です。そして、しかるべきタイミングが来たら、それを「提案書」の形に仕立てて、「もしよろしければご覧ください」という形で渡してみるのです。その人は、頼んでもいないのに提案を受けて、びっくりするかもしれません。それでも、わざわざ時間をかけて「思いをこめた提案書」を作ってくれたあなたを、無下にはしないでしょう。そこで門前払いされてしまうようであれば、その人とは縁がなかったということなのでしょう。はじめのうちは、自分から積極的に営業活動を行っていくことが重要です。なぜなら、最初のうちは「信用ゼロ」なのですから。

最初のうちこそ、「なんでもいいから仕事が取れればいい」というのではなく、ひとつひとつの仕事を丁寧に形にしていくことが大切です。それが「お客さまの満足」につながり、「信用」の土台となります。積みあがった仕事の実績は、少しづつ「ポートフォリオ(職務実績書)」としてまとめていきましょう。それはあなたの営業を大きく支えてくれるものになるでしょう。

ひとつだけ大切なポイントがあります。お客様から頼まれて行った仕事の成果を、あなたが好き勝手に「実績」として自己PRに使用するのは、お客様の気分を害することもありますし、場合によっては秘密保持義務違反・営業機密漏洩として問題になってしまう恐れもあります。「自分のポートフォリオに実績として掲載してもよろしいですか?」というように丁寧に伺いを立てるなどして、誠実に進めていくことが大切です。そして、そうした誠実なふるまいが、あなたの信用をますます高めていくことにつながっていくことでしょう。

つながりを育んでいこう ~リピーターを作り、ブランドを築きあげるには~

このようにしてひとつひとつの仕事を確実にこなしていくことで、あなたのもとには、徐々に仕事が次々に舞い込んでくるようになるでしょう。あなたのほうが仕事を選べるような状況が、いずれやってくるはずです。大切なことは、おごらないことです。調子のよい時ほど、調子に乗らないことが重要です。あれもこれもと手を出し過ぎると、必ず無理が祟ってしまいます。

それよりもなによりも大切なことは、お互いが本当に必要としあっていると感じられる取引先との関係を深めていくことです。フリーランスとしての仕事を無理のない形で長く続けていくためには、「継続顧客(営業しなくても仕事を頼んできてくださる方)」かつ「優良顧客(無理のないスケジュールで、きちんとした水準の報酬を支払ってくださる方)」である取引先と、「対等で持続的なパートナーシップ」を築き上げていくことが何よりも大切です。

そのためにも、お客様にとって必要不可欠かつ唯一無二の存在になっていくことが何よりも大切です。自分の仕事によってお客さまがきちんとした価値を得られているのであれば、仕事を継続していただけるのが必然なのです。なぜなら、あなたに仕事を頼み続ければ、お客さまはそれを上回る価値を得られ続けるのですから。また、あなたのほかに同じことを同じようにできる人がいなければ、あなたに仕事を出すより他ないのです。そのためにも、「お客さまのことを深く理解するよう努める」ということと、「お客さまにとっての価値は何なのか?ということを的確に理解できるよう努める」ということを忘れないようにしましょう。「お客さまとともに歩む」。そうした姿勢を大切に仕事をしていくことで、必ずや、「対等で持続的なパートナーシップ」を築き上げていくことができることでしょう。その結果として、「あの人と言えば、あの仕事をやっている人だよね」という確固たる評判とイメージ、すなわち「ブランド」が確立されていくのです。こうした「ブランド」を確立させていくことで、あなたのフリーランスとしての営みは、長く長く続く安定したものとなっていくことでしょう。

 3. 遠くにある「到達点」を見つめてみよう

20年計画・30年計画を立てておこう ~「定年」も「老後」もありません!~

フリーランスとしての仕事人生を長く長く続けていくイメージが少し湧いてきたでしょうか?フリーランス1年目から、20年後・30年後を意識した計画を立てておくことが大切です。「フリーランス1年目で、来年だってどうなるかわからないのに、20年後・30年後のことなんてわからないよ!」と思われるのも無理はありませんね。その通りかもしれません。フリーランスはとにかく不安定な働きかたですから、未来については予測できないことも多いものです。ですが、だからこそ、未来について計画できる限りのことを計画しておくことで、「今の安心」を少しでも強いものにしていくことができるのです。

フリーランスには、いわゆる「定年」がありません。自分自身の意思さえあれば、いつまででも働き続けていくことが可能です。「いまの仕事のやりかたで、20年後・30年後も同じように働き続けていくことができるだろうか?」ということを常に意識しながら、1年1年を計画的に過ごしていくことが大切です。そして、立てた計画を時折振り返りながら、柔軟に計画を見直していけばよいのです。

1年目こそ、まず守りを固めよう

フリーランスとして独り立ちした直後は、どうしても力んでしまうものです。とにかく早く稼ぎたい、実績を作りたい、名前を売りたい・・・と、「攻めの気持ち」が先行してしまうものです。ですが、本当に長く続けていきたいと考えるならば、まずは、何かあったときでも決して倒れない頑丈な足腰を作っておくことのほうが大事だと思いませんか。フリーランス1年目、「もしものときに備える」、すなわち「守りを固める」ことも大切なことです。

★もしものときに備えよう:1年目のチェックリスト

あなたの仕事道具には保険はかかっていますか。大事なデータは定期的にバックアップをとっていますか。

将来に向けた備えはできていますか。フリーランスは会社員と異なり厚生年金加入ではありません。確定拠出年金(401k)の運用、国民年金基金への加入、さらには個人年金など、将来に渡り収入を確保するための準備について、自分なりに検討を進めておくことが大切です。

もしものときに助け合える仲間はいますか。同業者は決して敵ではありません。もしものときに助け合うことができ、また、日頃から共に学びあえる貴重な存在です。心を開いて、積極的に関係性を築いていきましょう。

健康を大事にできていますか。もしものときの備えとしての保険をしっかり準備できていますか。頼れる病院はありますか。定期的に健康診断は受けられていますか。フリーランスでも受けることのできる定期健康診断もあります。自治体の健康保険関係の窓口や、地域の病院で相談してみましょう。

時間を大切にできていますか。健康管理の基本は、日々の体調管理です。フリーランスの体調管理の基本は時間管理です。どのようなリズムで働いて、どのようなリズムで休むか。決めるのはあなた自身です。しっかりと自分自身で労働時間管理をして、「休むときは休む」を心掛けることが重要です。横になる・寝るだけではない、「じぶんなりの上手な休みかた」をデザインしていくことが何より大切なことです。また、フリーランスとして生き延びていくためには、常に自身の技能をアップデートしていく必要があります。そのためには学習時間をしっかりと確保することが欠かせません。繰り返しになりますが、フリーランスの場合、あなたの時間の使いかたを決めるのはあなたなのです。1日24時間をどう配分するのがよいのか、1年目の365日を通じて試行錯誤を重ねましょう。そして、1年をかけて、フリーランスとしての「自分のリズム」を作り上げていきましょう。

1年目の終わりに ~フリーランスに「到達点」はありません~

大晦日の日を迎え、除夜の鐘が鳴れば、新しい1年のはじまりです。ですが、フリーランスの場合、その日から、毎年3月中旬頃が提出期限となる「確定申告」の準備が始まることになります(2021年は特例で4月15日までに期限が延長されました)。「確定申告」は、「面倒くさい作業」と捉えられがちですが、1年間の収支を振り返りながら、今後の改善点や将来の展望を考えていくことのできる貴重な機会ともなりうるものです。フリーランス1年目が終わり、1回目の確定申告作業を行う際、自分なりの「マニュアル(手順書)」を整備しておくようにしましょう。次の確定申告は1年後ですから、どんなに記憶力がいい人でも手順を忘れてしまうものです。簡単なメモ程度でもマニュアルを残しておけば、2年目以降は本当に楽になります。1年目の自分に、きっと感謝の気持ちでいっぱいになることでしょう。

そう、フリーランスとして働くのは本当に大変なことではありますが、きっちりと積み重ねていきさえすれば、1年目より2年目、2年目より3年目、年を重ねるごとに楽になっていくものなのです。「今がいちばん大変な時期だ」、そう思えれば、きっと、踏ん張れるはずです。フリーランス1年目、本当に大変な1年かと思いますが、本特集も参考に、思いっきり駆け抜けてください。フリーランスに「到達点(ゴール)」はありません。ずっとずっと続いていく長い道のりです。ですが、あなたが出発点としての初心を忘れずにいる限り、その道のりは、充実した楽しい道のりになるはずです。晴れてフリーランスの道を歩き始めたあなたへ。「道具として、他人にいいように使い倒される人生」ではない、「全人間的に働いて、お客様とも人間的に深くつながりあって、全人間的に生きていくことのできる人生」を、堂々と歩いていってください!

本特集に掲載しております情報は、正確を期すべく、しっかりと確認を行っておりますが、あくまでも参考としてご利用いただきますようお願いをいたします。

構成:旦悠輔(Wor-Q管理人 兼 Wor-Q Magazine編集長)

大学卒業後16年間に渡り大手コンサルティング会社・大手ポータル企業等でIT関係の仕事に従事したのち、フリーランスとして独立。Webサイト運営に関するコンサルティングから、システム設計・開発・運用、コーディング・デザイン、そして中身のコンテンツの企画制作(文章/イラストレーション&グラフィック/写真&映像)に至るまでオールマイティにこなすマルチフリーランサー。個人事業主としての屋号も、「肩書や職種の枠組にこだわらず、課題解決やイノベーションのために必要なことはなんでもやる」という決意をこめて「旦悠輔事務所」としている。当事者(フリーランス)のひとりとして、「フリーランスという働きかた」に関するさまざまな課題を解決に向かわせていきたいという思いをもって、Wor-Qの運営に携わっている。