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特集公開日:2022年8月29日 by Wor-Q MAGAZINE 編集部

Wor-Q MAGAZINE特集第12号のテーマは「フリーランスのための【メンタルヘルスチェック&メンタルケア】徹底ガイド~不安と孤独感に負けないで~」です。

こころの疲れは、自分ではなかなか気付けないものです。からだは元気なようでも、こころはボロボロ。よくあることです。そんなある日、こころの疲れが限界を超えてしまって、からだがガクンと沈んでしまう。思うようにからだを動かせなくなってしまい、働くことができなくなってしまう。それどころか、生きていくことすらシンドイと感じられるようになってしまう。でも、働かなければ生きていけない。でも、働けない。どうしよう。ますますこころが弱っていく・・・。こうしたネガティブスパイラル(負の連鎖)に陥ってしまうと、もう、簡単に状況を好転させることはできません。

こころの疲れは目に見えないものですから、常に、自分自身のメンタルの状態を意識して、ケアしてあげることが大切です。せめて一日に一度、立ち止まって、自分のこころの状態をチェックすることが大切です。とはいえ、自分で自分のこころの状態をチェックするといっても簡単なことではありません。本特集では、フリーランスの皆さんのために、メンタルヘルスチェックとメンタルケアの具体的なノウハウを徹底的に解説していきます。ぜひお役立てください。そして、ぜひ、必要とされている方に届くよう、このページのURLをシェアしてくださいますと幸いです。

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目次

フリーランスのための【メンタルヘルスチェック&メンタルケア徹底ガイド】~不安と孤独感に負けないで~

はじめに: ~フリーランスの生命線、メンタルヘルスをしっかり理解する~

  ■メンタル不調はなぜ起きるのか
  ■フリーランスはメンタル不調になりやすい
  ■メンタルヘルスを維持するためには
  ■「環境を変える」ことで「ストレスを減らす」
  ■メンタルヘルスチェック&メンタルヘルスケア
  ■不調が生じてしまった場合には

1:実践編 ~フリーランス3大メンタル危機に対抗する~

▼1-1:「このままではマズイという考えから逃れられない(不安感/焦燥感/緊張感)」
  ■不安感と、焦り・緊張
  ■不安感を消すには
  ▼なぜ不安なのか?を見極める
  ▼不安に思っていてもしょうがないこともある
  ▼「IF(もし~~~したらどうしよう)」を切り離す
  ▼「最悪の場合」って、どんな状態?
  ▼予測不可能な未来と、実現可能な未来
  ▼バッファを持つ ~~あなたにブレーキをかけられるのは、あなただけ~~
  ▼万が一に「みんなで」備える

▼1-2:「やる気が出ない(やりがいが感じられない)」
  ■リズムとルーティン
  ■VoC(お客様の声)を聞く ~「やりがい=やる気」はどこから生まれてくるのか~

▼1-3:「じぶんはダメだと思ってしまう(自己否定/自信喪失)」
  ■フリーランスは自信を失いやすい
  ■フリーランスと自己評価
  ■自己評価において、自己否定/自信喪失につながる「ズレ」が生まれるパターンを理解する
  ▼ズレ①:あなたが考える「お客様の期待値」が、お客様にとっての「実際の期待値」よりも高い
  ▼ズレ②:お客様にとっての「実際の期待値」が、お客様があなたに伝える「期待値」よりも低い
  ▼ズレ③:あなたが考える「お客様の期待値」が、お客様にとっての「実際の期待値」よりも低い
  ▼ズレ④:お客様にとっての「実際の期待値」が、お客様があなたに伝える「期待値」よりも高い
  ▼ズレ⑤:あなたが感じている「自分の仕事の価値」が、お客様が実際に感じている「あなたの仕事の価値」より低い
  ▼ズレ⑥:あなたが感じている「自分の仕事の価値」が、お客様が実際に感じている「あなたの仕事の価値」より高い

おわりに: ~「フリーランスという働きかた」を、真に「新しい働きかた」としていくために~

 「フリーランスのための【メンタルヘルスチェック&メンタルケア徹底ガイド】~不安と孤独感に負けないで~」

  はじめに: ~フリーランスの生命線、メンタルヘルスをしっかり理解する~

 ■ メンタル不調はなぜ起きるのか

仕事にはストレスがつきものです。ストレス負荷が高い状況の中で、さらに一定の条件が重なると、ストレス反応として、心身に不調があらわれるようになります。それでも無理をして働き続けてしまうと、社会生活に支障が出てしまうレベルの心身の不調が生じてしまう場合があります。そのような状況に陥る前に、できる限り早く対策を打っていくことが大切です。(メンタル不調の発生メカニズムについては、矢吹女性心身クリニック院長・矢吹弘子先生によるメッセージもぜひお読みください。)

みんなのためのフリーランス月間 2022|プレイベント第2弾「見逃さないで!あなたの心のSOS」を終えて|矢吹女性心身クリニック院長・矢吹弘子先生からのメッセージ

 ■ フリーランスはメンタル不調になりやすい

「自由なフリーランスだから、ストレスがなくていいね!」と言われて「そんなことないんだけどな」と思ったことのあるフリーランスの方は大勢いらっしゃると思います。フリーランスは個人事業主ですから、確かに、上司から業務上の指示命令を受けたり、従わなければならない組織のルールが存在したり、ということはないわけです。しかしながら、そのぶん、自分自身ですべて責任をもって意思決定しなければならず、自分で自分を律していかなければならないわけです。その意味で、一概には比較できませんが、「組織の中で働くのと比べて、フリーランスとして働くほうが自由であって低ストレスである」というふうには言い切れないのです。

なにより、フリーランスは、「孤独」であり「不安定」です。それゆえ、高ストレスな状況に置かれたときに、そのストレスを跳ね返すことができず、ダイレクトにメンタルがダメージを受けてしまうことになりやすいのです。

まず、フリーランスは「孤独」です。「孤独」というのは、愚痴を聞いてくれたり、何かあった時に相談できる相手がいない、というだけのことではありません。組織の中で働いていれば、例えば何か問題が起きた時でも、組織全体でカバーして、ダメージを最小化しようと動いてくれるのが普通です。ところが、フリーランスの場合は、何かあった場合でも、誰も守ってくれませんし、誰も代わりにやってくれないのです。要するに、「上司や同僚や専門の部署の専門家がカバーしてくれる」というようなことが一切ないのです。そのため、フリーランスは、「何か起きたらどうしよう」という不安を常に抱えて仕事をすることになります。そして、その「不安」自体が、ボディーブローのようにじわじわとダメージとしてメンタルに蓄積されていくわけです。

そして、フリーランスは「不安定」です。きょう受けている仕事があしたも続くとは限りません。何が起きるかわからない状況が常に続くわけです。したがって、なんとかして安定した状況を維持しようと無理・無茶をして過労状態となりがちですし、ここでも「不安」がダメージとしてメンタルに効いてくるわけです。

「不安」は、メンタルの基礎を揺るがします。「不安」にむしばまれた心は、ちょっとしたストレスにも過敏に反応して粉々に崩れてしまう場合もあります。フリーランスのメンタルヘルス維持の鍵は、「不安感の解消」にあります。

 ■ メンタルヘルスを維持するためには

メンタルヘルスを維持するためには、メンタル不調の発生メカニズムに沿って、以下(1)~(4)の流れでしっかりと「上流から」手を打っていくことが大切です。
(1)ストレスを減らす
(2)メンタルヘルスを定期的にチェックする(自分で自分のこころの状態をチェックする)
(3)(不調が生じないように)ケアする
(4)(不調が生じてしまった場合に)回復に向けて対処する

 ■ 「環境を変える」ことで「ストレスを減らす」

まず、どうすれば「ストレスを減らす」ことができるか考えてみましょう。「心配性」であるとか「繊細」であるといった「性格」を変えることは難しいものですし、なにより「性格」はあなたの大切な個性であるはずです。変えることができるのは(変えるべきなのは)、環境です。「環境を変える」ことで、ストレスを減らすことができます。どれだけ条件がよい仕事でも、(1)クライアント(お客様)と相性が合わない(2)クライアントから無理・無茶を言われる(3)クライアントからハラスメントを受ける、といった場合には、できるだけ早期に継続を辞退して、別のクライアントの仕事に切り替えるべきです。メンタルヘルスは宝です。どれだけスキルのある人でも、メンタルヘルスを損ねてしまっては、働き続けることができなくなってしまいます。フリーランスとして中長期で健康に仕事を続けていきたいと考えるならば、短期的には仕事を失うことになったとしても、環境を変えることによるメリットのほうが大きい、と言えます。

環境を変えるためには、「いま受けている仕事を打ち切って、別の仕事に移る」ことが必要になります。「こちらから途中で仕事を断ったりしたら訴えられそうだ」などと不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。不安な状況にさらされ続けていると、メンタルはどんどん弱ってしまいます。不安は、「調べること」「確認すること」で解消できるものです。契約途中での中途解除については、特集第8号(「契約書」の中身はどうしたらいいのか>1回限りの契約書(準委任型)>第9条(解除)の項目)を参考にしてください。また、弁護士相談サポート窓口もぜひご活用ください。「わからない」「どうしよう」という状況を放置しないことが大切です。不安の種は、どんどん潰していきましょう。

「仕事を断る」というカードは、立場の弱いフリーランスが切ることのできる数少ない交渉カードです。あなたが苦しい状況に置かれているということをしっかりと説明した上で、「このままでは続けられませんから、継続はお断りします」と意思表示することで、待遇の改善を勝ち取ることができる場合もあります。もしも、あまりにも無理・無茶な要求を受け続けてシンドイ状況に置かれている場合には、思い切って交渉を行い、状況が改善されなければ即座に別のクライアントを探すようにしましょう。それで、相手から「困る!」と言われても、あなただって困っているわけです。立場は対等なはずです。あなたも「いつ切られるかわからない」わけです。あなたも、本当にしんどいなら、「断る権利」を持っているのです。

無理・無茶が常軌を逸しており、あなた自身の人格すら否定されるような「ハラスメント」を受けてしまっている場合には、なおのこと、断固とした対処をすることが大切です。そうしたクライアントからは即刻距離を置くべきですし、それだけではなく、あなたが被った損害について、しかるべき主張をしていくべきです。特集第11号を参考にして、できるだけ早く、手を打つようにしましょう。そして、自分ひとりではどうにもできないと思ったら、急いで相談してください。つながってください。あなたはひとりではありません。

 ■ メンタルヘルスチェック&メンタルヘルスケア

とはいえ、「環境を変える」ことは容易ではありません。現実問題として、環境を変えることが難しい状況にある場合もあるでしょう(次の仕事の候補が見つかっておらず、短期間でも収入が途絶えたら直ちに生活が困難となる場合など)。また、どれだけ環境を変えたとしても、ストレスをゼロにすることは難しいものです。いかなる仕事であっても、必ず何かしらのストレスを伴うものです。ですから、「可能な限り働きやすい環境を整えていきつつ、それでも発生するストレスについてはマネジメント(コントロール)していく」ことが大切になります。

どうすれば、ストレスを【マネジメント(コントロール)】することができるのでしょうか。鍵は、言語化です。目に見えないストレスや、ストレスを受けて苦しんでいるこころの状態を、言葉にして、自分自身できちんと認識できるようにすることです。「いまどういう状態なのか?」「なんでこういう状態になってしまっているのか?」「じぶんはどういう状態でありたいのか?」ということがしっかりと捉えられるようになれば、あとは、自分自身で自分自身に必要なときに必要な声をかけてあげることで、適切な「セルフケア」ができるようになっていきます。

メンタルヘルスチェック&メンタルヘルスケアの具体的な方法については、本編でしっかりと解説を行っていきます。

 ■ 不調が生じてしまった場合には

どれだけメンタルヘルスチェック&メンタルヘルスケアをしっかりと行っていても、あまりにも状況がハードである場合には、不調が生じてしまうことがあります。なにより、セルフケアが得意な人もいれば、セルフケアがどうもうまくいかない、という方もいるでしょう。不調のサインを感じたら、できるだけ早く、周囲の信頼できる友人や専門家に相談することです。不調の度合いが深刻になっていってしまうと、周囲に相談することすら困難な状況に陥ってしまう場合もあります(深刻な人間不信に陥ってしまい「誰も信じられない」と感じてしまうような状況に陥ってしまうこともあるからです)。できるだけ早い段階で専門家に相談するようにしましょう(メンタルケアの段階でも、セルフケアだけでなく、専門家の手を借りてケアをしていくこともできます)。

ただし、メンタルが弱っている状態で誰かに相談をしようと考えるときには、悪質な詐欺などにひっかからないように注意することも必要です。メンタルが弱っていると、普段であれば絶対にしないような判断をしてしまうこともあります。弱っている人の弱みにつけこんで商売をしようとする人もいます。困った時は、専門家の力を借りながらも、「(なにもかも鵜呑みにするのではなく)おかしいものはおかしいと感じること」「最後は自分でしっかり決めて解決するのだという気持ちを持ち続けること」も大切なことです。何かに頼ってメンタル不調を回復させようとする場合、その何かに病的に依存してしまうようになってしまうリスクもあります。あなたのことを第一に考えてくれる、信頼できる相談先に相談をすることが一番大切です。そして、メンタルに深刻な不調が生じてしまった場合には「焦らない」ことが何より大切です。焦って回復を急ぐばかりに、却って深刻な状況を招いてしまうこともあります。焦らず、ゆっくりと、回復を進めていくことです。時間が解決してくれることもたくさんあります。

  1:実践編 ~フリーランス3大メンタル危機に対抗する~

さて、ここからは、実践編として、「メンタルヘルスチェック&メンタルヘルスケアの具体的な方法」について整理していきます。最初のステップは、「自分の心の状態を捉える(言語化する)」ことです。ひどく落ち込んでしまっていたり、あまりにも疲れてしまっていたりすると、「しんどい」「つらい」という表面の状況しか認識することができなくなってしまい、「なぜ、しんどい・つらいという気持ちになってしまっているのか?」まで深く掘り下げて見極めていくことが難しくなってしまうものです。

「自分の心の状態を捉える(言語化する)」ためには、まず、しっかりと休んで、リラックスできる状態を作り、過去のこと、現在のこと、未来のことを、思いつくままに言葉にして書き出していくことが一番効果的です(信頼できる話し相手がいれば、話を聞いてもらいながら言葉を吐き出していくのもよいでしょう)。ですが、「自分の心の状態を捉える(言語化する)」ことはなかなか簡単なことではありません。そこで役に立つのが、メンタル危機の典型的なパターンリストです。フリーランスが陥りやすいメンタル危機のパターンを理解しておくことで、「自分は、今、このパターンのメンタル危機なのかもしれないな」「このパターンのこの部分は自分の今の状態に近いけれども、この部分は自分の状態とは違うな」というように、典型的なパターンと照らし合わせながら、自分の心の状態を徐々にクリアにしていくことができるようになるのです。

本特集では3つの典型的なメンタル危機のパターンを取り上げ、簡単なチェックリストと、基礎的なケアの方法を整理してみました。

 1-1: 「このままではマズイという考えから逃れられない(不安感/焦燥感/緊張感)」

 ■ 不安感と、焦り・緊張

フリーランスのメンタル危機として一番メジャーで、おそらく誰しもが苦しむであろうものが、「不安感」でしょう。「このままでは、この先やっていけないかもしれない」。そうした不安感によって、「なんとかしなくちゃ」「もっと頑張らなきゃ」というように、焦りや緊張で常に自分自身が追い詰められた状態が引き起こされます。やがて、心身がすり減り、こころやからだが動かない深刻な状況に陥ってしまう場合があります。

応急措置としては、とにかく「自分自身をリラックスさせる」ことが重要です。方法はさまざまなものが考えられるでしょう。気分転換につながることをしましょう。仕事のことを忘れ、あなた自身が好きなことを、ゆっくりと楽しむことです。

しかしながら、こうした方法で焦りや緊張を完全に消し去ることは難しいものです。どれだけリラックスしようと思っても、根っこにある<不安感>を消せない限り、深く持続的なリラックス状態を生み出すことは難しいからです。

 ■ 不安感を消すには

それでは、どうすれば、根っこにある不安感そのものを消し去っていくことができるのでしょうか。もちろん、生きている以上、想定外の出来事が起きるリスクをゼロにはできませんから、不安感をゼロにすることはできません。ですが、テクニックによって、不安感を減らしていくことは可能なのです。

 ▼ なぜ不安なのか?を見極める

不安にもさまざまなタイプがありますが、大きく分ければ、次の2つのタイプに分けられるでしょう。

●【起きることが確実な未来に対する不安】:「このままいったら、まずいことが確実である(例:仕事の契約が今年で終わることが決まっていて、次の仕事が決まっていない、等)。したがって、将来が不安である」というタイプの不安

●【不確実な未来に対する不安】:「この先、まずいことが起きる「かもしれない」(例:このままだと、いつか、仕事の契約が打ち切られてしまう「かもしれない」、そうなったらもう二度と仕事を見つけられない「かもしれない」、等)。したがって、将来が不安である」というタイプの不安

まず、あなたが抱えている不安は、どういった不安であるのか、書きだして(吐きだして)、ひとつひとつ丁寧に整理してあげましょう。あなたはいったい、何が不安なのでしょうか?

 ▼ 不安に思っていてもしょうがないこともある

まず、【確実な未来に対する不安】に関しては、残念ながら、不安に思っていてもどうにもなりません。不安だ、と思っていても、未来が自動的に好転することはありません。未来において問題が起きることが確実に見えているのであれば、次の手を打って、行動するより他ありません。不安感で心が弱ってしまうと、行動するパワーも失われていきます。気持ちを切り替えて、前向きに行動していくことが大切です。勇気をもって「まず一歩」動き出してみましょう。いきなり遠くには行けません。「まず一歩」行動してみましょう。行動する中で見えてくるものもたくさんあります。

 ▼ 「IF(もし~~~したらどうしよう)」を切り離す

そして、【不確実な未来に対する不安】に関しては、「そんなことが本当に起きるのか?いったいどれくらいの確率でそうしたことが起きうるのか?」ということを冷静に考えてみることです。心配性な人は、確率的にはなかなか起きにくいことを、「IF(もし~~~したら、どうしよう)」と過剰に心配してしまいがちです。もちろん、適度なリスク意識を持つことは重要なことでもあります。リスク意識を持つことで、将来に向けて適切に備えていくこともできるからです。ですが、あまりにも強くリスク意識を持ちすぎると、「IF(もし~~~したらどうしよう)」意識にとらわれて、「今、目の前にある、やるべきこと」をこなすことが困難になってしまいます。「万が一」、つまり、10000分の1くらいの確率でしか起きえないことについては、心配しすぎることはやめて、いったん、切り離して忘れることも大切です。人生100年としても、一生は36,500日しかないのです。

 ▼ 「最悪の場合」って、どんな状態?

不安感を消すためのもうひとつのテクニックとしては、「それでも、もし万が一、とんでもないことが起きてしまったとして、いったい、どういう状況になって、具体的にはどれくらいの損害が生まれるのだろうか?」ということを冷静に考えてみることです。「最悪の場合」を考えがちな心配性のあなたであればなおさら、「最悪の場合、というのは、実際のところ、どういう状況のことなのだろう?」ということを考えてみるべきです。最悪の場合、あなたはどうなっているでしょうか?最悪の場合、あなたのまわりのひとたちはどうなっているでしょうか?もし何かが起きて「最悪の場合」になってしまったとしても、仕事を失うくらいで、あなたも、あなたのまわりのひとたちも、健康に暮らし続けることができるような状況が思い描けるのであれば、そのリスクは「許容可能」といえないでしょうか。いったんいろんなものがゼロになってしまったとしても、もう一度ゼロから努力すれば建て直せるものであるとするならば、そのリスクは「許容可能」といえないでしょうか。それよりも、「最悪の場合」を心配し続けて、あなたが心身の健康を深刻に害してしまっては、そちらのほうが「最悪の場合」ではないでしょうか。

 ▼ 予測不可能な未来と、実現可能な未来

「先々のことが見えない(何が確実で、何が不確実かが見通せない)から不安なんだ」というかたも多いことでしょう。こうした不安を解消するには、中長期のライフプランを立てることが何より有効です。10年20年先の長期の目標をしっかり定めたうえで、1年1年着実に計画を達成していくことが大切です。そのようにして計画的に歩んでいくことで、未来を「予測不可能なもの」から「実現可能なもの」に変えていくことができます。目の前に現れる出来事に都度都度対応して生きていくだけでは、いつまで経っても、あなたの人生は「予測不可能なもの」であり続けるはずです。そうした人生から脱却するためには、自分自身で目標と計画を定めて、コツコツと地道に計画を達成していくことです。そうした「達成感」こそが、「不安感」を打ち消してくれます。「ああ、自分で、未来は、作れるんだ」。たとえ小さな達成感であったとしても、こうした充足感をコツコツと心に満たしていくことで、心に不安が充満する隙間を減らしていくことができます。重要なことは、達成可能な計画とすることです。達成不可能な(難易度の高い)計画を立ててしまうと、却って、達成ができなかったときに自信喪失につながってしまうリスクがあります。1年は365日しかありません。確実に達成可能な計画を立てて、無理なく、地道に、努力を積み重ねていきましょう。

中長期のキャリア計画の立て方については、特集第9号も参考にしてください。あなたがまだフリーランスなりたての方だとしたら、ぜひ、特集第4号も参考にしてください。苦労や失敗を重ねながら経験を蓄積していけば、1年目より2年目、2年目より3年目、着実に楽になっていくはずです!

 ▼ バッファを持つ~~あなたにブレーキをかけられるのは、あなただけ~~

それでも、人生においては、予測不可能な出来事が起きてしまうものです。時に、信じられないようなことだって起きることがあります。そうしたときでも、底堅く生き抜いていくためにはどうしたらよいのでしょうか。

まずは、一定のバッファ(余裕)を持って働くことです。常に100%の稼働状態で仕事をしてしまっていると、万が一何かが起きた時に、その問題に対処するための時間を捻出することすら困難な状況に陥ってしまいます。ですから、基本的には、70%ほどの稼働状態をキープして、30%はバッファ(余力)として確保しておくことが大切です。「そんな余裕ないよ!」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これは、「さぼる」とか「手を抜く」ということではなく、「あらかじめしっかり最低限の【休み時間】は確保しておく」という意味合いでとらえてください。フリーランスは、自分自身で「休む」という判断をしない限り、週7日、どこまでも仕事を詰めこんでしまいがちです。「最低限ここまで成し遂げればOK」という【最低ライン】をきっちり定めて、その最低ラインをきっちりクリアしたら、それ以上無理をしないことが重要です。そうしておくことで、「万が一」に備えることにもなります。

何より、「疲れは不安を呼ぶ」ということをよく覚えておいてください。疲れているだけで、「このままではだめかもしれない」などと思いがちです。疲れを感じたら即座に休むことです。休憩することに罪悪感を感じる必要はありません。不安感を感じると焦りがちで、ついつい、無理をしてしまいがちです。だからこそ、あるラインを越えたら、自分で自分にブレーキをかけることを忘れないようにしてください。あなたにブレーキをかけられるのは、あなただけなのです。「きょうは終わり」「きょうも一日お疲れさま」、自分で自分にかける「区切りの合図」「いたわりの言葉」を用意しておきましょう。そう、あなたを褒めたり、いたわってくれたりする上司や同僚の役割は、あなた自身で果たすしかないのですから。

 ▼ 万が一に「みんなで」備える

このように、どれだけ万全の態勢で「万が一」に備えていても、不慮の事故や、思いもしなかった病気などで働けなくなってしまうこともあるものです。どれだけ注意していても、業務上の事故で、お客様の大切な物品を壊してしまうようなことも起きるかもしれません。こうした、どれだけ防ごうとしても防ぎようがないような「万が一」に備えるためには、「共済」への加入が一番確実な対処方法でしょう。共済は助けあいです。みんなの「万が一」に、みんなで掛金を出し合って備えるのが「共済」です。フリーランスは、通常、個人で共済に加入するしかありませんでしたが、Wor-Qライフサポートクラブに加入いただくことで、「団体扱い」で(手頃な掛金で)共済に加入いただけるようになりました。「よくある質問」も充実していますから、ぜひご自身で加入を検討してみてください。備えあれば憂いなし。万が一の時のためのしっかりした保障を組み立てておくことで、あなたの不安を消していくことができるはずです。「不安を減らすことができる」ということも、「共済」加入の大きなベネフィットです。

 1-2: 「やる気が出ない(やりがいが感じられない)」

続いて、フリーランスを悩ませるメンタルの危機といえば、「やる気が出ない(やりがいが感じられない)」状態ではないでしょうか。フリーランスの場合、誰かに業務上の指示命令を受けて働くわけではありませんから、自分で自分を鼓舞して働かなければならないわけです。そうすると、時折、どうしようもなく「やる気が出ない」という時がやってきます。ところが、誰かが叱ってくれるわけでもありませんから、ただただ時間だけが過ぎ去っていくわけです。それでも、やらなければならない仕事は厳然として存在しているわけですから、ただ単に、やるべきことが後回しになっているだけです。そのうちに締切/納期が迫ってきて、ギリギリになって自分を奮い立たせて猛烈に仕事をして、また燃え尽きて、やる気がゼロになってしまうーーー。そんな繰り返しにはまってしまっている人も少なくないのではないでしょうか。「やる気が出ない」というのは、「やる気がありすぎる」状態と裏表のようなもので、無理をすれば、反動として必ず「やる気が出ない」状態がやってきてしまいます。この状態が深刻化すると、仕事どころか、何もかも「やる気がない」状態に陥ってしまい、いわゆる鬱の状態へと進んでいってしまう場合があります。どうすれば、このような「やる気がない」状態に陥ることを防ぐことができるのでしょうか。

 ■ リズムとルーティン

鍵は、リズムをつくることです。フリーランスとはいえ、できる限り、毎日決まった時間に仕事をするようにし、一日、そして一週間の中での仕事のリズムを整えるのがよいでしょう。「この時間帯は仕事をする」「この時間帯は休む」ときっちり決めて動くことで、やる気にムラが出ないようになります。

リズムをつくりだすための秘訣は、ルーティンをつくることです。ルーティンとは、決まった動作のことです。いきなり仕事をしようと思っても、すぐにはエンジンがかからない、という方もきっと多いはずです。仕事に入るための予備動作として、「まず仕事場の片づけをして」「メールのチェックをして」「あの音楽をかけて」・・・というように、決まった動作のシークエンス(順番)を組み立てておくことで、スムーズに仕事に着手できるようになります。同じように、「仕事が終わった後は、休みの時間で、これをする」というような軽い「ごほうび」を用意しておくことも有用です。

 ■ VoC(お客様の声)を聞く ~「やりがい=やる気」はどこから生まれてくるのか~

そもそも、なぜ「やる気が出ない」状態になってしまうのでしょうか。「ただただ生活のために、やりたくもない仕事をやっている」というのでは、いくらリズムよく仕事を回せるようになったとしても、やがて限界がやってきてしまうはずです。

仕事の「やりがい」というのは、一般的に、自分自身の中から自然と生まれてくるものではなく、仕事の結果、他者が喜んでくれているのが感じられてはじめて形作られるものであると言えます。無我夢中で仕事をしていると、自分の仕事の成果によって「誰がどんなふうに喜んでくれているのか」が見えなくなってしまう時があります。特に、あなたの仕事が、最終的に出来上がるものの「一部」や「材料」をつくりだす仕事である場合には、最終的な仕事の成果が見えにくい時もあるでしょう。

ですが、「やりがい」を感じるためには、VoC(Voice of Customer:お客様の声)を聞くことが欠かせません。「やる気が出ない」と感じたら、いったん仕事の手を止めて、お客様の声が聞こえる場所まで歩いて行き、あなたの仕事の成果がお客様にどんなふうに喜んでいただけているのかを確認する時間を確保するのがよいでしょう。

これは、あなたの仕事の質を高めていくことにもつながります。どういうポイントがお客様にとっての喜びにつながっているのか?を知ることで、あなたの仕事は、さらに、お客様の喜びに正しくフォーカスされたものへと進化していくはずです。

ところで、調べても調べても、お客様が喜んでくださっているようには思えない場合にはどうしたらよいのでしょうか?それこそ、何のために働いているのかわからなくなってしまうかもしれませんね。ですが、そのような状況にある、ということは、あなたの仕事の方向性を変える節目が来ている、ということなのかもしれません。まずは、「自分は何のためにこの仕事を選んだのだろう?」、初心に立ち返って、確かめてみましょう。初心に立ち返ることで、「ああ、自分はこういうことがやりたくて、この道でフリーランスとなることを選んだんだ」と再確認できるかもしれませんし、「かつてはそうだったけれど、もう、(お客様のほうの)状況が変わってきたのかもしれない」と、新たな道へと転じていく決断ができるかもしれません。(「初心」については、ぜひ特集第4号「フリーランス1年目をどう生きるか」の「「初心」を言葉にしよう」の章も参考にしてみてください)

Wor-Q Magazine特集第4号|フリーランス1年目をどう生きるか

「やる気」は「あなたが、お客様の喜びを感じることができているかどうか」のシグナル(信号)だと思ってください。「やる気が出ない」という状況を、あなたの中だけで解決することはできません。「やる気が出ない」状況に陥ってしまったら、いったん自分からは目を離して、お客様のことを、しっかりと見つめ直してみましょう。

 1-3: 「じぶんはダメだと思ってしまう(自己否定/自信喪失)」

最後に、一番解決が難しいメンタルの危機と言えるかもしれない、「じぶんはダメだと思ってしまう(自己否定/自信喪失)」のパターンについて考えてみましょう。

「やりがい(やる気)がお客様の喜びから生まれる」ということはよく分かるし、自分のやっている仕事が世の中に必要とされていることもよくわかっている。でも、「自分の力不足で、どうも、期待に応えられていないのではないか」と落ち込んでしまい、仕事が手につかなくなってしまう。そうした、自己否定/自信喪失に苦しんでいる人もきっと多いのではないでしょうか。

 ■ フリーランスは自信を失いやすい

「自信」とは、自分を信じることです。自分の仕事を自分で認めてあげることです。これは、簡単なようで、とても難しいことです。「自分はダメだ」。そんなふうに、自己否定ばかりしていると、やがて自信喪失状態に陥ってしまいます。この状態が続くと、「自分には価値がない」と思うようになってしまい、深刻な心身の危機が生じてしまう場合もあります。

会社員であるならば、通常は、定期的に「査定」があり、仕事ぶりについて客観的な「評価」が得られるものです。まわりには同僚もたくさんいますから、良くも悪くも、比較できる対象も近くにたくさんいるわけです。ですが、フリーランスの場合、あなたの仕事ぶりについて、誰かが評価してくれるわけではないのです。そのため、フリーランスは自信を失いやすいのです。

自信喪失に陥らないようにするためには、自分で自分の仕事を適切に評価するより他ありません。ですが、自分で自分の仕事を適切に評価するというのは、簡単なことではありません。

 ■ フリーランスと自己評価

どうすれば、自分で自分の仕事を評価することができるのでしょうか?一番は、自分の仕事に満足していただけているかどうか「お客様に聞くこと」です。聞かなくても、きちんと伝えてくれるお客様もいらっしゃることでしょう。「満足しています」、もしくは、「具体的に、この点が不満です。この点を解決してくだされば、満足です」としっかりとコミュニケーションしてくださるお客様は、「よいお客様」です。ですが、そのような「よいお客様」は少ないものです。勇気を出して、あなたから問いかけて、お客様からフィードバックをもらうようにしましょう。聞かない限り、お客様が満足しているかどうかは分からないものです。わからないから、不安になり、不安になるから、「たぶんダメなんだろう」と自分で自分を否定して、自信喪失に陥ってしまうのです。

ですが、聞いたとしても、きちんとしたフィードバックをしてくれるお客様は限られているものです。そして、もしも運よくお客様の声が聞けたとしても、正しい自己評価ができるとは限りません。世の中には、「本当は不満だけど、頑張って仕事してくれたから、満足したと言っておこう」というようなお客様もいますし、逆に、「満足しているけれど、あえて言わない」「満足しているけれど、あえて不満であると言う」ようなお客様もいるのです。相手の本当の気持ちは見えにくいものです。どこまでいっても、最終的には、自分自身で評価するより他ないのです。

仕事の評価、すなわち、「お客様が満足してくれているかどうか」を、自分自身で測るにはどうしたらよいのでしょうか。簡単です。お客様の「期待値」に対して、あなたの仕事が生み出した価値の水準がぴったり一致すれば、「お客様の満足」が生まれます。仕事の後、「満足してくださったかどうか」を確認するのはなかなか難しいことですが、仕事の前に「何をご期待頂いているかお聞かせください」と確認することは比較的容易にできます。仕事の前に「お客様の期待値」をしっかりと確認し、自分の仕事が期待値に即したものになっているかどうか、自分なりに達成度を測れるようにしておくとよいでしょう。

 ■ 自己評価において、自己否定/自信喪失につながる「ズレ」が生まれるパターンを理解する

「お客様の期待値をもとに自己評価をする」場合、「お客様の期待値」と「あなたの仕事が生み出した価値」の間に「ズレ」が生まれる場合があります。「ズレ」が生まれると、「お客様に満足してもらえていないのではないか」という思いが生まれ、「自分はダメなんじゃないか」という思いにとらわれることになってしまいます。自己評価をしていて自己否定/自信喪失に陥りがちな方は、次の6つのパターンのどれかに陥っていないかどうか、セルフチェックしてみてください。

 ▼ ズレ①:あなたが考える「お客様の期待値」が、お客様にとっての「実際の期待値」よりも高い

お客様にとっての「実際の期待値」は「100」なのに、あなたが考える「お客様の期待値」が「200」だった場合に、あなたは「200」を作り出そうとして、「頑張りすぎてしまう」ことになります。「100では満足してもらえないかもしれない」、そうした不安が、あなたを頑張らせすぎることになります。これは、永遠に「自信がない」状態が続いてしまうことを意味します。あなたが勝手に「お客様の期待値」を上げる必要はないのです。「前回100だったから、次は200、その次は300を出さないと満足してもらえないはずだ」と考えてしまう真面目なあなたは、少し肩の力を抜きましょう。お客様の期待値は「100」なのです。「100」の仕事を成し遂げることが、あなたにとっての【最低ライン】なのです。

 ▼ ズレ②:お客様にとっての「実際の期待値」が、お客様があなたに伝える「期待値」よりも低い

お客様にとっての「実際の期待値」は「100」なのに、あなたからできるだけのものを引き出そうとして、「私の期待値は200です」と伝えてくるお客様もいます。「どうせ手を抜くだろうから、200と言っておけば、100で出してくるだろう」などと考えるお客様もいます。一番困るのは、最初は「100を期待しています」と言っておきながら、仕事が終わった後、「本当は200を期待していました」と言ってくるようなケースでしょう。いずれにしても、健全ではありません。駆け引きはあなたのメンタルを疲弊させます。このパターンにおいても、相手が延々と期待値を引き上げてくるような状態が続けば、当然のことながら、あなたは永遠に「自信が持てない」状態が続いてしまうことになります。そのようなお客様からは距離を置くことが大切です。相手の言うことをすべて鵜呑みにしないことです。あなたのことをきちんと評価して、「満足している」ということをきちんと伝えてくれるお客様を見つけることです。仕事を委託する側と、受託する側は、本来対等であるはずです。お互いにお互いを尊重し、感謝しあうことが基本です。

 ▼ ズレ③:あなたが考える「お客様の期待値」が、お客様にとっての「実際の期待値」よりも低い

逆に、あなたはお客様が「100」(あるいは「方向性A」)を期待していると思っていたら、実際は「200」(あるいは「方向性B」)を期待されていて、結果、お客様に満足してもらうことができずに自信喪失になってしまった、という場合を考えてみましょう。

あなたとしては一生懸命頑張って「100」(「方向性A」)をつくりあげて期待に応えようとしたのに、お客様から評価してもらえなかったら、きっとガッカリしてしまいますよね。このようなことにならないようにするためにも一番大切なことは、予め、相手の期待値の「レベルの高さ」と「方向性」をしっかり確認しておくことです。「レベルの高さ」だけでなく、「方向性」も確認することが肝要です。どれだけあなたが努力しても、お客様が期待しているポイントからズレてしまっては、お客様に満足してもらうことはできません。たとえどれだけ大変な仕事だったとしても、努力の方向性がズレていたら、お客様の満足にはつながらないのです。あなたがどれだけ高いスキルをもっていたとしても、相手の課題に応えることができないピント外れの仕事をしてしまっては、お客様にとっての満足にはつながらないのです。「なんで自分は頑張っても頑張っても評価されないんだろう・・・」と思ったら、自分からは一旦目を離して、【お客様が何を求めているのか】にじっくり耳を傾ける時間をしっかり確保したほうがよいかもしれません。(お客様にとっての価値を生み出す力については、特集第9号「50年後も生き残る!フリーランスのためのスキルアップ&キャリアアップ戦略ガイド」内の「「スキル」と「ケイパビリティ」 ~「スキル」だけでは仕事にならない~」の章も参考にしてみてください。)

重要なことは、このような場合においても、自己否定する必要はない、ということです。お客様の満足が得られなかったとしても、それは、あなたのスキルが低いということでもなく、あなたにセンスがないということでもなく、あなたの努力が足りなかったわけでもない、ということです。ただ単に、「期待値の理解がズレてしまった」だけなのです。必要なことは、「ズレ」を補正していくことです。相手の期待値を正しく把握する方向に努力を振り当てていくことです。そして、どれだけ努力しても、「ズレ」を解消することができないのだとしたら、それは、「相性がよくない」ということなのです。あなたの才能や努力が足りないわけではないのですから、あなたが落ち込む必要はありません。あなたにあったお客様を探すようにしましょう。

 ▼ ズレ④:お客様にとっての「実際の期待値」が、お客様があなたに伝える「期待値」よりも高い

お客様があなたに遠慮したりして、本当の期待値よりも低い期待値を伝えてきていて、実際のところは全然満足してくれていなかった、というような場合も考えられます。あなたは「お客様に満足してもらっている」と思っていたのに、ある日突然「今後は違う方にお願いするので、今回で最後にさせてください」と言われて強いショックを受けてしまったりすることもあるでしょう。このような場合には「割り切り」「切り離し」といったテクニックも有用です。あなたは、お客様から聞いていた期待値にしたがって、誠実に仕事をしてきたのです。それ以上でも以下でもありません。不必要に、「ああ、本当は満足してもらえていなかったんだ」などと考えて落ち込む必要はないのです。

もちろん、あなたに余裕があるならば、常日頃から、お客様の期待値を上回る仕事をして、満足度を高める努力をしていくことも大切なことです。お客様が困っていること、本当は必要としているであろうことを察して、先回りして仕事をしていくのです。そうすることで、「ある日いきなり仕事を打ち切られて強いショックを受ける」というような事態を防ぐことにもつながります。ですが、くれぐれもやりすぎは禁物です。「無理のない範囲で、できる限りのことをする」ことが肝心です。「70%の稼働、30%のバッファ」をここで思い出しましょう。

 ▼ ズレ⑤:あなたが感じている「自分の仕事の価値」が、お客様が実際に感じている「あなたの仕事の価値」より低い

ここまでは、「お客様の期待値」に関する「認識のズレ」について考えてきました。ここからは、「あなたの仕事の価値」に関する「認識のズレ」について考えていきましょう。

お客様は、あなたの仕事の価値を、期待値通りの「100」だと思っているのに、あなた自身は「50」しかできなかった、あるいは、自分は本当は「200」できるのに、などと思ってしまっているようなケースを考えてみましょう。「自分で自分を評価できない」場合です。①のケースにもよく似ています。①のケースは、あなたが勝手に相手の期待値を上げてしまうケースです。この⑤のケースは、あなたが勝手に自分の仕事の価値評価を下げてしまうケースです。よく似ていますが、違います。

この⑤のケースは、相手がどれだけ満足してくれていたとしても、「自分としては納得がいっていない」という感情にとらわれてしまうようなケースです。「本当はもっとできた」とか、「自分にできる仕事はこの程度なんだ」などなど、自意識(プライド)によって引き起こされるメンタル危機です。

ここで重要なことは、「仕事はあくまでも仕事であり、自己満足のためにするものではない」ということです。「仕事」に関しては、お客様が満足してくれているかどうかにフォーカスして、客観的に自己評価するべきです。

 ▼ ズレ⑥:あなたが感じている「自分の仕事の価値」が、お客様が実際に感じている「あなたの仕事の価値」より高い

逆の場合も考えてみましょう。自分では、自分の仕事の価値を、お客様の期待値通りの「100」だと思っているのに、お客様には「50」だと思われてしまっているようなケースを考えてみましょう。「自己評価が高すぎる」場合です。このような場合には、「これだけの経験をもった自分がこんなにいい仕事しているのに、なんで評価されないのか?」などと怒りの感情が湧いてくることもあるでしょう。なかには「嫌がらせをされてるんじゃないか」などと感じてしまう人もいるかもしれません。これも、自意識(プライド)によって引き起こされるメンタル危機です。自己評価が高すぎる人が、あまりにも評価されないことが続くと、反動で自己評価が急落し、深刻な自信喪失や人間不信に陥ってしまう場合もあります。

フリーランスは仕事の成果でしか評価されません。なにか特別な肩書があるわけでもありませんし、いわんや過去の経歴で評価してもらえるわけではありません。厳しい世界です。自意識(プライド)がメンタルの問題を引き起こしているな、と思ったら、虚心坦懐、まっさらな気持ちに立ち返ることです。過剰な自意識(プライド)は捨てましょう。重要なことは、スキルを磨き続けることです。努力は裏切りません。スキルは着実に積みあがっていきます。そして、スキルをお客様にとっての価値に変えていく能力、すなわち、「お客様の期待値を正確に理解する能力」を磨く努力を怠らないことです。お客様の期待値から離れて、自分の仕事の価値評価を自分で勝手に上げ下げしないことです。粛々と、仕事師になりましょう。

何より重要なことは、「仕事上の評価は、仕事に関する評価にすぎない」ということを忘れずにいることです。つまり、あなた自身の全人格に関する評価ではない、ということです。たとえ仕事に関してうまくいかないこと(思うようにお客様の評価が得られないこと)があったとしても、あなたのすべてが否定されているわけではないのです。しっかりと切り離して、あなたはあなたの人生を力強く生きていってください。

  おわりに: ~「フリーランスという働きかた」を、真に「新しい働きかた」としていくために~

ここまで、3つの典型的なメンタル危機のパターンを取り上げ、簡単なチェックリストと、基礎的なケアの方法を整理してきました。これらのパターンをチェックリストとして活用していただいて、是非、定期的に、自分自身の心の状態を確認するようにしてみてください。

会社に雇用されて働くのではない「フリーランス」という働きかたを選択する人は、これからもますます増えていくと言われています。「副業」という形も含めれば、その数はますます増えると言われています。ですが、「フリーランス」という働きかたが、本当の意味で「新しい時代にふさわしい新しい働きかた」として社会に根付いていくためには、「フリーランス」として働く人たちのメンタルの健康がしっかりと守られるような環境が整備されていくことが必要不可欠です。そのような環境の整備が伴わなければ「フリーランス」として働く人たちは「フリーランス」として働き続けることが困難となってしまい、「持続可能な働きかた」たりえません。

フリーランスは、「孤独」であり「不安定」であるため、ストレスのダメージをダイレクトに受けてしまいがちです。ですが、フリーランス同士つながることで、「孤独」も「不安定」も解消していくことができます。「何かあった時に相談しあえる」「情報交換&情報共有できる」というだけでなく、より実際的に、「お互いの得意不得意を分業・協業で補いあう」「必要なツールやインフラを共有する」「お互いに必要としているであろう人同士を紹介してつないでいく」といったことができるようになります。「つながる」ことで、フリーランスとしての自由を確保しながら、なおかつ、孤独や不安定を解消していくことは十分に可能なのです。

2022年4月には、歴史上初めて、「フリーランスが安心して働ける環境づくりのために、今すぐできることや、課題解決に向けた取り組みなどを一緒に考える【フリーランス月間】」が連合の主催で開催されました。こうしたイベントに参加するのも、メンタルを健康に保つために非常に効果的なことです。あなた自身のメンタルを健康に保つことにもつながりますし、フリーランスとして働くみんなのメンタルを守ることにもつながっていきます。ぜひWor-Qでフリーランスに関するさまざまなイベントの情報をチェックして、積極的に参加してみてくださいね!

本特集に掲載しております情報は、正確を期すべく、しっかりと確認を行っておりますが、あくまでも参考としてご利用いただきますようお願いをいたします。

構成:旦悠輔(Wor-Q管理人 兼 Wor-Q Magazine編集長)

大学卒業後16年間に渡り大手コンサルティング会社・大手ポータル企業等でIT関係の仕事に従事したのち、フリーランスとして独立。Webサイト運営に関するコンサルティングから、システム設計・開発・運用、コーディング・デザイン、そして中身のコンテンツの企画制作(文章/イラストレーション&グラフィック/写真&映像)に至るまでオールマイティにこなすマルチフリーランサー。個人事業主としての屋号も、「肩書や職種の枠組にこだわらず、課題解決やイノベーションのために必要なことはなんでもやる」という決意をこめて「旦悠輔事務所」としている。当事者(フリーランス)のひとりとして、「フリーランスという働きかた」に関するさまざまな課題を解決に向かわせていきたいという思いをもって、Wor-Qの運営に携わっている。

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•特集第11号ハラスメントに絶対負けないフリーランスになる ――すべての働くひとが対等に尊重される社会を目指して――」(2022年4月29日公開)
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•特集第2号フリーランスとして生き延びていくための「消費税/インボイス制度」徹底解説」(2021年2月28日公開)
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