特集第7号「フリーランスが労災に備えるには -共済・保険について考える-」
2021年9月8日
特集公開日:2021年9月9日 by Wor-Q MAGAZINE 編集部
Wor-Q MAGAZINE特集第7号のテーマは、「フリーランスが労災に備えるには -共済・保険について考える-」です。
会社に雇用されていないフリーランスは、基本的に労災保険に加入できません。ただし、特別加入団体を事業主とみなす形でフリーランスや個人事業主でも労災保険制度に加入できる「特別加入制度」があります。特別加入の制度確立以降、労働環境の変化に伴い、全業種ではないもののITフリーランスなど、対象となる業種や職種が広げられています。しかしながら、そういった周知・広報が不足していることは否めません。
この特別加入制度は、保障内容は充実していますが、通常の労災保険と違い自分で保険料を支払う必要があり、年間保険料は、「保険料算定基礎額×保険料率」で決まります。保険料算定基礎額は、申請に基づいて、労働局長が決定し、保険料率は、業種によって異なります。当然、財布に影響します。自分が特別加入の対象者であるかどうかわからない方は、お近くの労働基準監督署または都道府県労働局に問い合わせれば、丁寧に答えてくれます(お問い合わせ先一覧はこちら)。
一方で、労災保険に加入したとしても、労災は労働基準監督署が業務上の災害と認定したものに限定されるため、メンタルヘルス不調など、認定されるのが難しい事例もあります。労災の特別加入は民間の保険より保障が充実しているためおススメですが、一方で、収入の波の大きい不安定な働き方であるフリーランスとしては、お手頃に充実した「もしものときの備え」を用意しておきたいと考える方も多いのではないでしょうか。
最近では、いくつかのフリーランス向け共済・保険も登場してきています。本特集では、フリーランスにとっても財布に優しく、保障が手厚い共済・保険についてご紹介します。加入するために必要なお金と、もしものときに受け取ることのできるお金のバランスをみながら、自分にとって最適な共済・保険を選んでいきましょう。
労災について詳しくは労働相談Q&Aをご覧ください(要ログイン)。
ぜひお読みください。また、どうぞ、必要とされている方に、このページを教えてあげてくださいね。
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フリーランスのための共済「Wor-Q共済(ワーク共済)」
2021年7月、働くひとを守り支え、すべての人が安心して働き・暮らすことができる社会の実現に向けて活動している団体である「連合(日本労働組合総連合会)」は、いまご覧いただいているウェブサイト「Wor-Q(ワーク)」を通じて、オンラインで手続ができるフリーランスのための共済「Wor-Q共済(ワーク共済)」の提供を開始しました。
この「Wor-Q共済」は、フリーランスの皆さん向けの福利厚生を提供する団体である「Wor-Qライフサポートクラブ」に入会いただくことで、団体扱いの手頃な掛金で「もしも」の時に備えることができる共済に加入することができる仕組みです。
詳しくは「Wor-Q共済」のページをご覧ください。
共済ってなに?
共済は、横でつながって、相互に助け合うための仕組みです。みんなで共済掛金を出し合って、共同の財産を積み立てておきます。そして、「もしも」のときが来てしまった人に、積み立てておいた共同の財産から、共済金を渡してあげる、という仕組みです。「誰かが困ったときに、他のみんなで助けてあげる」という精神で営まれているものです。
詳しくは「こくみん共済coop|共済とは?」のページをご覧ください。
こくみん共済coop|共済とは?
「Wor-Q共済」は、年会費3,000円(1日約8円)の「Wor-Qライフサポートクラブ」に入会いただくと、「基本共済」が無料でついてくる仕組みになっています。これにより、「死亡したとき」「重度障がいになったとき」「病気や不慮の事故で入院したとき」「居住している建物が火災等により損害を受けたとき」に、共済金を受け取ることができます。「フリーランスのみんなでお金を出し合って、仲間が大変な状況になってしまったときに、みんなで支えあおう」という仕組みなのです。基本共済で受け取ることができる共済金の額はささやかなものかもしれませんが、しんどい時に受け取ることができる「仲間からのお見舞いの気持ちのこもったお金」は、きっと、あなたを優しく支えてくれるものになるはずです。
共済の詳細の内容に関しましては必ず「Wor-Q共済|基本共済」のパンフレットをご確認ください。
Wor-Q共済|「基本共済」パンフレット
これに加えて、さらに充実した保障を備えておきたい、と思われる方のために、オプションがしっかりと用意されています。
まず、病気や不慮の事故などによる死亡・重度障がいや入院を保障する「団体生命共済」があります。加えて、病気や不慮の事故などによる入院・手術などを保障する「総合医療共済」があります。これらの組み合わせによって、病気や不慮の事故などに備えることができます。
※「団体生命共済」・「総合医療共済」については、被共済者が危険職業・制限職業にあてはまる場合には、加入を制限させていただくことがあります。
加えて、労災保険においては、傷病の療養のため労働することができず賃金を受けられないときには「休業(補償)等給付」を受け取ることができますが、これに相当する「所得補償制度」という保険もオプションとして提供されています。
(さらに、フリーランスならではの「損害賠償リスク」をカバーする「損害補償制度」という保険もオプションとして提供されています。こちらの詳細は、特集第3号をご覧ください。)
また、そもそもWor-Q共済は、労災--仕事に関連した災害--以外の、「暮らしのなかでのリスク」(ーー仕事と直接の関係がないケガや病気などーー)もカバーしてくれるものです。このように、Wor-Q共済は、労災保険でカバーされる範囲を上回る広がりでもって、フリーランスならではの「もしも」のリスクに備える保障を受けることが可能な仕組みになっているのです。
入院したり、治療を受けたりしなければならない事態に備える
「基本共済」では、「災害入院共済金(不慮の事故による入院の場合)」「病気入院共済金(病気等により入院した場合)」いずれも、日額1,000円の共済金を最大で180日分(=合計18万円相当)受け取ることができます。
ところで、入院や治療にかかる医療費は1日あたり1万円~1万5千円が目安と言われています。その際、健康保険などの公的医療保険制度を利用することにより、自己負担は1~3割となりますから、おおむね日額で約3,000円が自己負担額となります。1か月30日で計算しますと9万円です。ただし、もしも本当に入院するなどして治療を受けるとなりますと、入院に関連して必要になる諸費用(身の回りの品を購入するお金など)や、差額ベット代(通常のものより快適な病室で過ごすために必要となる費用のことです。自己負担となります。)といったお金が必要となる場合があります。それらも考えますと、1日約1万円程度を入院にかかる費用として想定しておいた方が安心、とも言えます。健康に暮らしているときには考えもしないことだと思いますが、一度、もしも入院するとなった場合にどの程度のお金が必要になるのか、試算してみるとよいでしょう。そのうえで、自分にあった水準の保障を選んでいくのがよいでしょう。(※共済の詳細の内容に関しましては必ずパンフレットをご確認ください。)
Wor-Q共済|「団体生命共済」パンフレット
Wor-Q共済|「総合医療共済」パンフレット
自身が死亡したり重度障がいとなってしまったりした場合に備える
扶養家族がおられる方などで、自身が死亡してしまった場合や重度障がいが残ってしまった場合(特に、「仕事ができなくなってしまう」レベルの重たい障がい。「身体障害者障害程度等級表」における1級と2級に該当するものが「重度障がい」とされます。なお、労災に関しては、障がいの重たさを定義した等級表が設けられています。1級から3級までの障がいについては労働能力喪失率100%とされています。)に備えておきたいという方もおられるでしょう。
厚生労働省|身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)
厚生労働省|障害等級表
厚生労働省|労働能力喪失率
「基本共済」では、死亡の場合、重度障がいになったとき、いずれも、10万円の共済金を受け取ることができます。死亡の場合、共済金の受取人は、契約者の「配偶者」が第1優先順位となり、それ以降、「子」、「父母」・・と続きます。「残された人(遺族)に、共済金を託すことができる」ということです。なお、ここでいう「配偶者」とは、婚姻届を出している場合に限らず、「婚姻関係と異ならない程度の実質を備える状態」にあった人を含みます。戸籍上の性別が同一である場合についても、加入時に確認書類の提示(自治体の同性パートナーシップの証明書、住民票、Wor-Qライフサポートクラブ所定の確認書のいずれか)をいただいていれば、第1優先順位の受取人となります。
「団体生命共済」に加入頂くことで、「基本共済」に係る共済金に加えて、死亡の場合、重度障がいになったとき、いずれも、300万円~1000万円の共済金を受け取ることができます(プランによって受け取ることのできる共済金に幅があります。プランによって掛金が異なります)。
※重度障害共済金は、労働者災害補償保険法に準じた、規約に定める身体障害等級別支払割合表に掲げる障がいの程度に応じてお支払いします。
※共済の詳細の内容に関しましては必ず「Wor-Q共済|団体生命共済」のパンフレットをご確認ください。
Wor-Q共済|「団体生命共済」パンフレット
働けなくなってしまった場合に備える
このように、重たい障害を負ってしまって仕事ができなくなってしまった場合だけでなく、病気やケガで働けなくなってしまう場合というのもあります。そうしたケースに備えるための保険が「所得補償制度」です。入院の場合に限らず、医師の診断による自宅療養の場合でも保険金を受け取ることができます。
病気やケガで働けなくなってしまった場合、入院や治療にかかるお金が必要となるだけでなく、自宅住居の家賃やローンといった固定費の支払は続けていく必要があります。そうしたお金をしっかりと工面し続けるための保障が「所得補償制度」です。通常時における自身の毎月の収入の水準にあわせて、1か月あたり1口10万円から5口50万円までの幅で「最長12か月間」万が一の際に補償を受けることができる保障を組み立てることができます(口数によって必要な掛金が変わります。年齢、職種によっても必要な掛金が変わります)。
詳細の内容に関しましては必ず「Wor-Q共済|所得補償制度」のパンフレットをご確認ください。
Wor-Q共済|「所得補償制度」パンフレット
(※なお、「所得補償制度」に関しては、他の保険契約等から、保険金または共済金が支払われた場合には、保険金が差し引かれることがあります。詳細はパンフレットをご確認ください。労災保険特別加入時における労災保険の保険金との重複の場合など、「複数の保険・共済に加入している場合の扱い」については、ケースバイケースとなりますので、ご自身が加入(を検討)されている保険・共済の運営団体に対して、ご自身で詳細をご確認いただきました上でご加入頂くことをおすすめします。)
「もしも」の事態ができるだけ起きないように
このように、共済・保険への加入によって「もしも」に備えておくことで、不安を感じることなく日々の仕事に打ち込んでいくことができるようになるでしょう。しかしながら、できれば、「もしも」の事態が起きないに越したことはありません。仕事を通じて健康を損ねたり、事故にあったりすることがないように、自身で注意することはもちろんのこと、「無理・無茶な仕事を受けないようにすること」「契約によって、そうした「無理」や「無茶」が起こらないように定めておくこと」、そして、「仕事を発注する側の責任において「安全」に関する最大限の配慮をすることなどを定めておくこと」が大切です。明らかに仕事の発注者側に問題があって、仕事を通じて、フリーランスとして働くあなたが損害を被った場合には、発注者側に対して通常の損害賠償請求を行うことも可能です。そのような時にはすぐに弁護士等の専門家に相談するようにしましょう。
以下のWor-Q相談事例集も参考にしてみてください。
Q|業務委託契約先からのハラスメントにより精神を患い、仕事を休業することになりました。休業補償を求めることはできますか。
「もしも」のときは、共済を通じて、横で助け合う。そして、「もしも」のことが起きないように、横で支え合って、ノウハウを共有しあう。そうして横でつながることで、フリーランスであっても、「安心」して働くことができるようになります。ぜひ、フリーランス課題解決サイト「Wor-Q」を思いっきり活用して、フリーランス同士の横のつながりを作っていってください!Wor-Q事務局も引き続き全力で「フリーランス同士の横のつながりを作るための場作り」を進めて参ります!
注
1.本特集においては極力「障がい」という表記を使用するようにしておりますが、法律等を指し示す場合において参照先が「障害」という表記を取っている場合等においては、「障害」という表記を使用しております。
2.本特集に掲載しております情報は、正確を期すべく、しっかりと確認を行っておりますが、あくまでも参考としてご利用いただきますようお願いをいたします。
構成:旦悠輔(Wor-Q管理人 兼 Wor-Q Magazine編集長)
大学卒業後16年間に渡り大手コンサルティング会社・大手ポータル企業等でIT関係の仕事に従事したのち、フリーランスとして独立。Webサイト運営に関するコンサルティングから、システム設計・開発・運用、コーディング・デザイン、そして中身のコンテンツの企画制作(文章/イラストレーション&グラフィック/写真&映像)に至るまでオールマイティにこなすマルチフリーランサー。個人事業主としての屋号も、「肩書や職種の枠組にこだわらず、課題解決やイノベーションのために必要なことはなんでもやる」という決意をこめて「旦悠輔事務所」としている。当事者(フリーランス)のひとりとして、「フリーランスという働きかた」に関するさまざまな課題を解決に向かわせていきたいという思いをもって、Wor-Qの運営に携わっている。
公開中特集一覧
•特集第14号「フリーランスのためのITツール徹底活用ガイド【後編】~IT系フリーランスじゃないあなたも必見~」(2022年12月2日公開)
•特集第13号「フリーランスのためのITツール徹底活用ガイド~IT系フリーランスじゃないあなたも必見~」(2022年10月31日公開)
•特集第12号「フリーランスのための【メンタルヘルスチェック&メンタルケア徹底ガイド】~不安と孤独感に負けないで~」(2022年8月29日公開)
•特集第11号「ハラスメントに絶対負けないフリーランスになる ――すべての働くひとが対等に尊重される社会を目指して――」(2022年4月29日公開)
•特集第10号「フリーランスなりたての方のための経理&確定申告総合ガイドー決定版!個人事業経営マニュアルー」(2022年3月4日公開)
•特集第9号「50年後も生き残る!フリーランスのためのスキルアップ&キャリアアップ戦略ガイド」(2021年11月9日公開)
•特集第8号「決定版!フリーランスのための【契約書の結びかた】徹底ガイド」(2021年10月11日公開)
•特集第7号「フリーランスが労災に備えるには -共済・保険について考える-」(2021年9月9日公開)
•特集第6号「フリーランスの出産・育児、そして介護を考える」(2021年6月30日公開)
•特集第5号「フリーランスの【報酬】を考える~働いたら「報われる」社会を目指して~」(2021年5月31日公開)
•特集第4号「フリーランス1年目をどう生きるか」(2021年4月30日公開)
•特集第3号「徹底解説!「損害賠償」をしっかり理解して<強いフリーランス>を目指そう」(2021年3月31日公開)
•特集第2号「フリーランスとして生き延びていくための「消費税/インボイス制度」徹底解説」(2021年2月28日公開)
•特集第1号「コロナ禍で苦しむフリーランスの方々のための「2021年/令和2年分確定申告」お役立ち情報」(2020年12月28日公開)